ーーJR北海道や国には、どうアプローチしていきますか。
大泉 JR北海道さんについては、調査結果が出てから4月上旬に今井政人副社長にお会いしました。調査に協力していただいたお礼と調査結果の報告でした。具体的な何かを提案するとか、協議をしたということではありません。その後、JR北海道さんは定期記者会見などで、例えば、車両費が整備費の中に含まれていないとか、列車走行時の建築限界基準についての課題、運行主体など、いくつか懸念を示されています。協議が始まっていないわけですから、当然そうした懸念は出てくると思います。
JR北海道さんの基本的な立場は、2011年に北海道新幹線開業に伴い、並行在来線を分離することに沿線自治体が、合意したという事実です。もちろん、函館市も了承、合意しています。ここが出発点で、現状はそのままの状況です。今の段階でJR北海道から具体的な話を完全に拒否されているとか、協議そのものを拒絶されているということでは決してありません。賛成も反対もしようがないということだと認識しています。
ーー調査結果を受けて、どう具体的に進めていきますか。
大泉 まずは、地元の北斗市や七飯町など近隣自治体、そして北海道庁、JR北海道さんと調査結果を共有したいと思います。また、これは在来線の話なので、国が直接的な許認可をする必要がある案件ではないと認識しています。ただ、新しく線路を敷いて、新しい車両を走らせるということになるので、安全確認などの課題が当然出てくると思いますが、整備新幹線のように、鉄道局や国会議員にアプローチをしなけれはならないものではありません。
関係自治体やJR北海道さんなどと協議を進めていく中で、だんだんと間合いが詰まっていけば、そこで見えてくる隘路とかハードルをどのように解消するかについて、国に相談する段階が、いずれ来ると思います。今は、『私たちはこう考えて動いてます』ということを調査結果が出たことに合わせて、国や国会議員の方々と情報共有をさせていただいている段階です。
※編集部注…2024年9月6日に新幹線函館乗り入れについて、初めての市民フォーラムが開催され、大泉市長は、通常規格の車両での運行とJR北海道に費用負担を求めない方針を示した。
ーー棒二森屋の閉店に伴う函館駅前東地区の市街地再開発事業についての対応は、いかがですか。
大泉 函館の駅前大門地区は、市民や観光客、ビジネス客が多く訪れる、いわば函館の顔です。街の賑わいをつくる重要な場所なので、市も市街地再開発事業に関わって、魅力的な空間がつくられるように望んでいるところです。直接的には、準備組合が事業を進めていて、マンション、ホテル、商業棟、公共施設を中心に想定していますが、ホテルでは、新しいホテルブランド誘致の可能性が出てきており、事業計画の再検討を行っているということです。函館の顔で重要な場所なので、焦って決めてしまうよりは、より良く変化するのであれば、それは構わないと私は昨年から話しています。
※編集部注…函館駅前東地区市街地再開発準備組合は、2024年9月30日に、道に再開発組合の認可申請を行った。また、市は、同年10月19日と21日に、再開発ビル内など2ヵ所に整備する公共施設(広さ約2000㎡)について市民説明会を開催した。
ーー観光客も戻ってきましたが、観光振興について市長は、どう考えていますか。
大泉 函館を訪れる観光客は、コロナ前の9割まで回復しているという数字が出ています。今年は、非常に函館が、国内外から注目されるような要素が多い。劇場版コナンの舞台が函館になったこともそうですし、クルーズ船も過去最多、59回の寄港が予定されています。台湾の航空便も2社体制になったので、私自身も非常に手応えを感じています。
オーバーツーリズムに関しては、函館でも弊害が起きつつありますから、先手を打たないとなりません。一例として、函館山山頂での夜景鑑賞や市電の停留所が、混雑するということが起きています。今後、函館山の混雑状況が、可視化できるような取り組みに着手していきます。ある時間帯に極度に集中してしまうので、ロープウェーが混雑していることが、分かるように対応したい。
ーー函館山のポテンシャルは高い。歴史的な価値や植生などを考えれば、山そのものが観光資源になるのではないかと思います。
大泉 函館山は、自然や歴史的遺産など、仮に夜景がなかったとしても、ポテンシャルは相当高いと思います。そこを生かそうとしている民間の方は、たくさんいます。どうしても函館山からの眺望に目が行きがちですが、函館山そのものが持つ存在の大きさを市も民間も、もっと注目すべきだと思います。そうした魅力を引き出す活動を推し進めることは、大事なことだと思います。