荒川氏は、農政部が振りだしで、その後は政策畑を歩み知事室長、総合政策部長を経て副知事に起用された。副知事を7年間務めた山本邦彦氏と同様、調整型の達人とされ、高橋知事もそこを評価して抜擢した。しかし、吉川勉強会の、“メンバー交代事件”はある意味で行政官僚の面子を潰す意味を持った。担当が担当から外されれば、組織の目はもちろん、外部の目も変わる。荒川氏は内心穏やかではなかっただろう。

 そんな伏線が今回の押し出し人事に繋がった訳だが、道議会自民党会派の幹部が「副知事3人留任」の意向を知事サイドに伝えたにも拘わらず、知事が側近を引き上げたことに批判が渦巻く。まとまりがないとされている今の道議会自民党会派でも半数近くが知事の側近重用はやり過ぎということで一致しているらしい。

 荒川氏退任後の転出先も不透明。6月交代が多い道関連団体などには何も伝わっていない。「知事は4年間も補佐した副知事の後の面倒も見ずに出すことはしない」という道庁OBの声がある一方、「6月改選の組織ならもう水面下で転出人事の調整が行われていなければならない。それが聞こえてこないのは不思議だ」というOBの声もある。
 こんな意見も出ている。「山谷氏には贔屓の引き倒しのように脚光が当たり、結果として荒川氏退任の水脈になった。一番困惑しているのは、実は山谷氏ではないか」(道議OB)。

 4期目折り返しの高橋知事にとって波風が立つ副知事人事は火薬庫にもなりうる。さる道庁関係者は、「ポリシーが一貫しておらず、その時その時の権力構造に振り回される感があるのが高橋知事だ。経産官僚の出自が未だに抜けていない。今回の人事はそれを典型的に示したものだろう。5選も囁かれる知事だが、こんなことではいずれそういう声も囁かれなくなる」と言う。

 知事の大手メディア選別も露骨になってきた。知事の好みはA紙で知事サイドのA紙へのリークは度が過ぎているとの評だ。一方、知事が距離を開けているのがB紙。知事のB紙忌避は少なくとも数年前から一貫している。知事は記者との定例会見で、事前に質問項目を擦り合わせる“答弁調整”のような慣例も未だ崩さないという。副知事人事を巡る波風とメディアの選別のツケはいずれ1つの大きな潮流に繋がるかもしれない。(終わり)



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