IMG_1534 道は26日、道庁の行財政改革の取り組みについて意見を求めるため有識者7人を集めた懇談会を知事会議室で開いた。2005年から始めた行財政改革で13年までに人件費700億円の削減や投資的経費860億円の圧縮などによって歳出を1200億円削減、歳入不足は05年の2150億円から14年で720億円と3分の1まで改善できたことなどを報告。出席者は行財政改革の取り組みを評価する一方で、「知事はビジョンを示し優先順位を付けた予算配分をすべきだ」(近藤龍夫道経連会長)、「行財政改革の道筋を整理整頓する必要がある」(高向巖道商連会頭)など厳しい意見も出た。(写真は、知事会議室で行われた道の行財政改革に関する有識者懇談会)
 
 有識者7人は、近藤、高向両氏のほか吉見宏北大大学院経済学研究科長、小磯修二北大公共政策大学院特任教授、佐藤俊彰ホクレン会長、工藤和男連合北海道会長、橋本昭夫弁護士。
 
 道はパワーポイントを使って05年から現在までの行財政改革の実績を説明するとともに14年から2年間の取り組みについて報告した。歳入不足が3分の1に改善したことや道債残高が14年末に目標とする5兆円を下回ること、実質公債費比率が13年で20%近傍まで下がることなど、行財政改革の成果が上がっていることについて、出席者は評価、今後も改革の手綱を緩めることなく推進していくことを要望した。
 
 一方で、厳しい意見も出た。近藤氏は、「行財政改革は良いが税収増に繋がる施策が不十分。実質公債費比率は21%になっても全国ワーストであることに変わりはない。今後、高齢化や人口減少で生産年齢人口が低下、歳入歳出はますます低下する。甘いことを言っている場合ではない。削減、削減と強調するが、それが果たして妥当なのかどうかが読み取れない。従来通りの予算の中で従来通りのことしかしないという硬直化の傾向があるのではないか。食・観光は重要施策なのだからこの分野に予算を傾斜配分することを考えなければならない」と語り、道の観光予算について言及。
「道の観光予算は年間6億円だが、札幌市は8億円。また香川県は17億円もある。香川は徳島に負けたくないから観光予算をこれだけ取っている。広い北海道で6億円の倍以上あってもおかしくない。観光は即効性があるからすぐに回収できる。20億円入れたら倍返しは簡単にいく。知事はビジョンを表明し、予算配分に優先順位を付けトップダウンで大胆に実行していかなければならない。皆で痛みを分かち合って、立ち行かなくなるのが心配」と鋭く切り込んだ。
 
 高向氏は、拓銀破綻以降にデフレが進行し、道内GDPは20兆円から18兆円に減ったことをあげ、「道内最大の銀行、最大のゼネコン、最大のデパートが破綻、最大のホテルも厳しい状況だ。併せて中小の都市の衰退も進んでいる。札幌一極集中でバランス崩れることも懸念されるので、行財政改革を整理整頓する必要がある」と語った。
 さらに高向氏は、自身が頭取を務めた北洋銀行の合理化を例に出し、「拓銀は132店舗、北洋は121店舗、札銀は73店舗あり全部で326店舗を道内に配置していた。しかし、3行統合で182店舗と半減に近い状態になった。店舗削減しても支障がなかったのは、それほど経済が減速しているからだ。道庁は組織も業務も整理整頓すべき」と強調した。
 
 工藤氏は、行財政改革を向こう2年間継続するにあたって延長線上ではだめだと指摘、「選択と集中でスリム化を加速し目指す姿をどこに求めるかが重要。地域を回って感じるのは、総合振興局の強化が必要ということ。人員削減は成功したが、今後は体制整備が求められる。人材育成などミドルエイジのモチベーションをどう高めて行くかも課題」と述べた。
 
 橋本氏は、05年当時の道財政について「丸井今井と同じ実質破綻先で企業なら民事再生しなければならない状態だった。しかし、人件費削減で職員自ら身を削って13年までに収支不足を3分の1にしたのは大きな成果。結果、道は要注意先にランクアップした」と語ったうえで、「改革に必要なのは選択と集中、スピード、継続性の3つ。道民を巻き込んでオール北海道で行財政改革に取り組むことが大切」と指摘した。
 
 高橋はるみ知事は、7人の指摘に「意義深い示唆をもらった」と述べ今後の人事施策について紹介。女性職員の活用や高齢者の再任用、能力主義の徹底を図ることを示した。「再任用では地方勤務がイヤという人もいてモチベーションをどう高めて行くか。道庁としてもつらいところがある」と実態を話した。
 また、知事は公共事業など投資的予算について、「少しゆとりができたので、少し緩める感じで対応したい」と語った。

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