ーー北海道独自の認証基準ということでしょうか。
石井 2015年頃からESG投資(環境や社会に配慮して事業を行って、適切なガバナンスがなされている会社に投資すること)が活発に行われました。それが、2022年ぐらいから少し落ちてきました。一つはコロナの問題、もう一つは、ロシアのウクライナ侵攻です。それと、もう一つの要因としてあるのが、グリーンウォッシュ。見せかけのグリーン、まがいもののグリーンをグリーンウォッシュとか、ESGウォッシュと呼んでいますが、それを防ぐために、欧州はかなり基準を厳しくしました。その基準は、今、グローバルスタンダードになっていますから、GXの国際認証もその基準をベースにしたものにしなくてはなりません。チーム札幌・北海道と、これから共同で専門的組織とのアライアンス、助言を受けながら検討していく必要があると思っています。
それからもう一つは、札証が主体になるのか、チーム札幌・北海道が主体になるのか、あるいは札幌市なのか、道なのか、まだ何も決まっていませんが、多角的な発信をしていく必要があるということです。国際的な金融センターを目指すため、GXに関する国際的ニーズに沿った内容を発信していかなければなりません。もちろん、私たち独自でやらなくてはならないのは、GXに関する上場債券やETFなどの価格動向、売買動向などを固有の業務として新たに加えていかなければならない。
昨年、チーム札幌・北海道は、ヨーロッパに視察に行きました。欧州を代表する国際金融センターとして一番進んでいるのは、ルクセンブルク。そのルクセンブルクでのノウハウをチーム札幌・北海道は吸収してきたので、それをベースに、北海道独自のものをどう構築していくかということになります。札証の新組織もそれをにらんだものです。
ーー国際金融センターを目指すという構想は、大変ワクワクしますね。
石井 そうですね。今、世界の金融センターの1位はニューヨークです。2位がロンドン、東京は19位です。東証の上場会社数は約3900社、名証が約280社、福証は約100社、札証は61社です。東証と札証にはこれだけの差があって、なおかつ東京が19位です。そのことを考えると、本当に長い道のりだと思いますが、私は北海道には、それだけのポテンシャルがあると思っています。
GX投資の促進だけにスポットが当たりますが、北海道はGXだけに可能性があるわけではありません。食分野をとっても、ワイナリーは、私が頭取時代には20ヵ所くらいでしたが、今は60を超えています。植物工場もできて、ミニトマトやイチゴなど、北海道からどんどん移出されています。そういう面では、まだまだ北海道はポテンシャルが高く、日本、世界をリードする役割をずっと継続して担っていけると思っています。
それにプラスしてGXという、大きな可能性が出てきました。資金は巨大に動き、向こう10年で国全体で官民合わせて150兆円の投資規模になります。そのうち北海道には、40兆円の投資が計画されています。このチャンスは、やはりさきほどのパスツールの言葉ではないですが、しっかりと準備をして、北海道の成長に資金が回るようにしなければなりません。資金が地域で循環すると、必ず経済は成長します。
ーー半導体関連やGX産業には、地域の信用金庫や信用組合も金融面の関わりが期待されます。
石井 洋上風力発電では、地方の信金、信組の力を借りて、一緒に事業を推進していくことが期待できると思います。
ーーGXの具体的推進についての見通しは。
石井 これから共同歩調でロードマップをつくっていくことになると思います。マイルストーンをしっかりとつくり込んでチェック体制を構築、スピードと柔軟性を持って進めていくことが必要になってきます。いずれにしても、変化をつかみ取る準備は、しっかりとしなくてはいけないですが、決して一長一短にできるものではありません。夢物語を描くつもりは全くありませんし、直面する課題がこれからたくさん出てくるでしょう。さまざまな問題点を直視しながら、一つひとつをクリアしていく基盤をどうつくっていくのかが、私の役割だと認識しています。
ーーところで、最近は趣味の山歩きはされていますか。
石井 山歩きは全然していませんが、健康のために1日6㎞を歩いています。ちょうど1万歩です。藻岩山が見える啓明地区に自宅があるので、そこから北海道神宮まで往復しています。冬でも長靴を履いて歩いていますよ。3月からリタイアして、少しゴルフを楽しもうかと足腰を鍛えるつもりだったのですが、今はいろんなプレッシャーを感じながら歩いています。歩くついでに買い物もよくしますが、一人暮らしをして16年になるので、最近は、料理のレパートリーがずいぶんと増えました(笑)。