札幌証券取引所・石井純二理事長インタビュー「国際金融都市目指す。夢物語で終わらせない」

経済総合

 ーー札証は、RIZAPグループの売買高が全体の9割です。1社に頼り過ぎという面は否定できない。解決策をどう見通していますか。

 石井 特定の銘柄に偏重した市場構造になっているのは事実です。RIZAPグループは、東証に上場する予定と聞いていますので、その影響は小さくないと思います。ただ、東京の市場に移行するには、時間が相当かかります。それから、同社の取引は、ほとんどがネット取引。したがって、札証の取引が全部なくなることはないと認識しています。
 マーケットは、私たち取引所の意志は働かないところです。先ほどの繰り返しになりますが、札証の特徴であるアンビシャス市場への上場を増やしていくことが、(1社偏重の)解決策に繋がると思います。また、北海道関連の企業、北海道出身の企業はもとより、北海道で商売をしている企業の重複市場を増やしていくことも鍵になると思います。

 さらに今、札証は、現物株式の上場がほとんどですから、取り扱い商品の多様化に取り組む必要があります。ETF(上場投資信託)、それから北海道にもリートが設立されたので、リート商品も取り扱うなどの対応を図っていきたい。また、GXに関連して、GXに絡んだ銘柄の株式、社債、投資信託などが新たに上場していくことも考えられると思います。

 ーー経済界との連携は、今まで以上に必要です。連携促進に関しては、どうお考えですか。

 石井 今まで以上に綿密に、なおかつ、目的をしっかり持って取り組んでいきたい。繰り返しになりますが、北海道にはチャンスが来ていますので、札証にとっても大きなチャンスですし、抱えている構造問題を改善していくチャンスでもあります。そこをしっかりと進めたい。パスツールの言葉に、「幸運は、用意された心のみに宿る」というものがあります。じっと待っていても、ダメなんですね。しっかりと準備をしたい。その準備というのは、札証も含めたオール北海道で取り組まなければなりません。GXに関しては、チーム札幌・北海道がコンソーシアムをつくって主導的に動いていますが、連携・協働して前進することが必要だと思います。

 ーー2000年以降、地方の証取は広島、新潟、京都とどんどんと廃止されました。札証にも不要論がありましたが、経済界はよく踏ん張って残したと思います。

 石井 かつては全国で9ヵ所の証取がありましたが、今は4ヵ所に集約されました。私は、証取の再編は終了したと思っています。むしろ、国の成長戦略の中で、いわゆるスタートアップ企業の支援機運が、あらゆる方面で高まっています。地方証取として、東京以北は札幌にしかありませんから、地方経済活性化のためにも、私は、その存在意義がむしろ高まっていると思っています。

 ーー札証を含めた札幌市の経済は、福証のある福岡市の経済とよく比較されます。

 石井 福岡市は、2014年にグローバル創業雇用創出特区の指定を受けています。2020年には、国際金融機能を誘致するために、チーム福岡を結成しています。札幌よりも早くそういった取り組みをしています。もともと、アジアのゲートウェイを追求してきた地域ですから、そういった面では、私たちよりも早くこうした取り組みをしています。今回、福岡も特区に指定されたので、連携して福岡のノウハウや課題などを謙虚に吸収していきたい。

 それから、札証は職員12人ですが、福証は28人と倍以上です。福岡県や福岡市、九州電力、西鉄、福岡銀行、西日本銀行などの出向者が8人ほど在籍しています。そういう面では、オール福岡で対応しています。札証も新事業推進部を設置して、チーム札幌・北海道に参画している企業、団体から出向者に来ていただく体制にしました。

 ーーGX投資促進のための部署新設ですね。

 石井 札証もチーム札幌・北海道に入っていますが、今回の特区指定を受けて、具体的にどういった仕事をしていくのか、あるいはその内容について、これから共同で進めていきたい。札証の方向性として、大きく2つの動きがあると思っています。一つは、GXに関する認証機能です。国際基準に則った認証基準に加えて、地域経済への波及、あるいは地域との共生をどう進めるか、ガバナンスも含めて認証機能の中にどう組み込んでいくかを、具体的にチーム札幌・北海道と詰めていきたい。

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