(写真は、「すすきの村」として日中から開放している「フレアバーes」)

 ーー当初から反響を予想していましたか。

 鈴木 これほどまでの反響があるとは思いませんでした。50人ぐらいまで増えたら広告をかけて村民を増やそうと考えいましたが、その必要はなくなりました。食事を提供できるのも、他のコワーキングスペースとの違いです。村民は30%オフで、ラーメンやタコライスなどが食べられます。お子さんがいる村民もいるので、子どもの料理イベントも定期的に開催しています。ポーカーで遊んだり、オンラインで交流できる仕組みをつくったりするなど、定期的なイベント開催で、村民同士が繋がりを持てるようにしています。

 料理はテイクアウトできても、お酒はテイクアウトできないので、独自に瓶詰めリキュールを作ったり、APRグループの青木康明代表取締役と一緒に「ススキノエール」という地ビールの製造も開始しました。キッチンカーも3台あってイベント時に利用しています。ここにいると、毎日いろんな村民が来てくれて、「こんな遊びをやろうよ」となったら集まってくれ、「共創」に近い部分があると思います。余談ですが、屋上にはサウナも設置しました。一般開放はしていまませんが、村民は自由に使えます。ちなみに私は毎日入っています。
 この「すすきの村」のモデルを利用して、「さっぽろ村」(北4西2TRビル9階)も開村し、旭川に「あさひかわ村」も試験的に開村しました。私は、この「村」づくりを全国展開できたらと考えています。村民は「すすきの村」だけではなく、全国各地の「村」に入村することができるようにしたいですね。この村づくりを「全国滞在型飲食店プロジェクト」と名付けたゆえんです。

 ーーウィズコロナを見据えてすすきのに新風を吹き込んでいるのでは。

 鈴木 元々、新しいことをいち早くしたい性分です。でも、新しいことをすると大体は批判されます。特に協会のような同業者団体は、新しいことに批判的。語弊があってはいけませんが、コロナ禍で良かったことの一つは、飲食的経営者が線引きされたことです。「コロナ禍でも何か面白いことをやろう」という人たちと、「政府が悪い、誰彼が悪い」と言っている人たちとの線引きです。わざわざお金を払って「村人」になった人たちは、何かワクワクを探しているのです。ここに来る人たちは、みんな何か面白いことをしようというポリシーの人たちばかりです。

 コロナ前に、実験的に毎日バーテンダーが変わるお店を始めてみたのですが、バーテンダーが変わると、お客も変わり、お客が変わればコミュニティも変わります。そうすると、毎日が新規オープンのような雰囲気になります。また、「プロレスバー」のようにテーマを決めて貸し出したこともあります。そうすると、初めてでも、会話が弾みます。ただ、こういった取り組みを継続して行うのは無理があります。その日だけなので盛り上がるのです。これから、コロナ禍で飲食店ビルのテナントが抜けていくのが必至なので、みんなで使うシェアリング形式でお店をやるのも面白いと思います。

 ーー新しいことを考えていく時がワクワクするということなのでしょうが、ワクワク感はすすきの再生のキーワードですか。

 鈴木 私は正直言って、経営はゲームだと思っています。最高の遊びであり、面白さがあります。そのゲームを38歳の時に、一旦攻略してしまった感がありました。ゲームは攻略すると虚しさもある。あんなに面白かったけれど、全面クリアしちゃったというような感覚です。ちょうど、次の楽しみを探している時に、言い方は別にして、コロナ禍とどう向き合うかという新しい課題が出てきたのです。コロナ禍でも、面白く、格好良く行動し続けることが、当社の使命。心を動かして、行動に繋げる。ワクワクはこれからの時代、すごく重要なものになると思います。誰かが、誰かに話したくなるようなワクワクを創っていくこと。今回の「すすきの村」も、基本的には人づてに村民が増えていったのですが、その原動力は、村民たちのワクワクする気持ちだと思います。

 AIの進展でマーケティングのスキームはAIでできてしまうでしょう。人が対応してもAIと同じような着地をするでしょう。だからこそ、遊びのクリエイティブな部分が大事になっていきます。ここの部分にフォーカスしていくことが必要ですが、一つの方向として違和感が源泉になるではないか。「何、それ?」という違和感が大切。「フレアバーテンター」の大会開催のため、クラウドファンディングをした時も、「支援者募集」ではなくて「共犯者募集」とアピールしました。支援者では訴えが響かないのです。大会を一緒に仕掛けていこうという「共創」=「共犯者募集」としたからこそ予定の3倍もの資金が集まりました。「すすきの村」も、ある意味で違和感のある組み合わせだと思います。人は、こういう異質なものとの組み合わせにワクワクするのでしょう。札幌中心部飲食店応援プロジェクトの札幌街歩き謎解きアプリ「さっぽろクエスト」もその一つです。

 これから考えているのは、スキマバイトアプリ「タイミー」のような、すすきの飲食店向け求人事業です。飲食店も人手不足なので、「タイミー」を利用している店も多いですが、飲食店はアルバイトの言動一つでお客の評価が決まってしまうので、相性があまり良くない。そこで、飲食に特化した「タイミー」のようなアプリを近くリリースしたい。応募者に飲食店で働くための教育などをして、ポテンシャルを高めた上で対応していこうというものです。様々な飲食店のノウハウをリソースとして共有するなどして、「ホーキング」というサービス名でリリースしたい。面白くて、誰かのためになることが、私の目指す「共創」に繋がります。(終わり)



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