時計台観光・鴨田誓一代表取締役インタビュー「『味の時計台』を3年で再生、食べに行きたくなる店にする」

経済総合

 ーー札幌のラーメン業界をどう見ていますか。

 鴨田 以前から、関東であろうと北海道であろうと、商売をすることに地域はあまり関係がないと考えています。どの地域でも一番店にならなければいけないというコンサルタントがいますが、私は投資をしてランニングコストを勘案して、これくらいの売り上げがあれば良いという数字を達成すればその地域で5番でも10番でも良いと考えています。結果、どの地域に出しても1番か2番になっている。自分たちの店が目標を達成していれば、それ以上でもそれ以下でもないという社風をつくってきました。他のラーメン店や業界のことにはあまり関心がありませんし、地域でものを考えたこともないですね。

 地域ごとに味を変えているラーメンチェーン店がありますが、トイダックは一切変えていません。でも、東京で食べたのと、大阪で食べたのでは味が違うとよく言われます。違うのは使っている水が違うからです。水がご当地の味をつくるのです。

 ーー元々はゲームショップがスタートですね。ラーメン店を始めたきっかけは何ですか。

 鴨田 今でもゲームショップを2店舗展開していますが、15年前からラーメン店を始めました。その頃、ゲームショップが少し下火になったからです。私は当時、ゲームショップは10年後になくなるのでは、と思いました。アメリカではゲームショップがなくなっていたので、日本だけ例外ということはないため、いずれ淘汰されると思いました。
 次に手掛ける事業が何も思い浮かばなかったのですが、子どもの頃から好きだったラーメンを事業にしてはどうかと思いました。ラーメンを作ることはできないが、経営はできるのではないかと。食べる側からアプローチするのも面白いかなと思い、どうせやるなら全国で出店していくことを決めました。多くの人が美味しいというラーメンでなければ全国展開はできないと考え、「横浜ラーメン壱六家」の門を叩きました。

 世間は、東京と言うと大阪の人が嫌がったり、福岡と言ったら、札幌の人が嫌がったり、その反対だったりします。その頃、万人受けする地域のキーワードは京都、神戸、横浜でした。この3つの名前を出しても誰も文句は言わない。それで、「横浜家系ラーメン」という冠があったら絶対浸透するのではないかと考えました。全国展開するために、誰もが認める味で、受け入れられやすい「横浜」を付けたわけです。

 繁盛店というのは、頭に残る店のこと。忘れられたり、気付かれなかったりする店は長続きしない。お客さまが覚えている店でなければいけない。そのために、「魂心家」では、「まくり券」(スープを飲み干すともらえる1ヵ月有効のサービス券)を配布したり、毎月22日をラーメン一杯500円で提供する「魂心家の日」に設定したりしています。最初の頃、東京都内に出店してサラリーマンがよく利用してくれたのですが、22日から24日までの売り上げが良くなかった。それで「魂心家」の日を設定したのです。そうしたら22日だけでなく、23日、24日も売り上げが良くなりました。
 このようにトイダックがやっていることには全部、意味があるのです。何も思いつきでやっているのではありません。「まくり券」も簡単に捨てられないように丈夫な紙でポケットに入るサイズにしています。また、ポスターは全部自前で作っています。そういうところにお金をかけています。他のラーメン店とはサービスや集客に対するアプローチの仕方が全く違うと思います。

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