ラーメン店「味の時計台」を展開する時計台観光(本社・札幌市中央区)をトイダック(同・神奈川県大和市)の鴨田誓一代表取締役(57)が個人承継してから半年、時計台観光が再生に向けて動き始めている。コロナ禍によるインバウンドの蒸発と地元客の来店減少が重なって一気にブランド力が低下した「味の時計台」だが、鴨田氏は3年間でブランド再生を成し遂げると宣言する。横浜家系ラーメン「魂心家」で快進撃を続けるトイダックの経営モデルをつくり上げた鴨田氏は、「味の時計台」の一部店舗を「魂心家」に転換、浮上のリード役を担わせて着実に収益改善を進めていく考えだ。時計台観光代表取締役のポストに就いた鴨田氏にインタビューした。(写真は、時計台観光・鴨田誓一代表取締役)

 ーー時計台観光を買収したきっかけは。

 鴨田 5年くらい前から横浜家系ラーメン「魂心家」を北海道に出店しようと考えていました。物件探しで不動産業界を回ったりしていましたが、あまり良い物件がなく、不動産業界の人たちもあまり真剣に考えてくれなかった。諦めかけていたら、北海道にも店舗がある大阪のお好み焼き屋のM&Aの話がきました。直営とFC(フランチャイズ)合わせて40店舗くらいの規模です。その話を持ってきた人に、「ラーメン店はないですか」と改めて聞くと、「あるにはあるが、なかなか進まない物件」として紹介されたのが時計台観光でした。

 時計台観光は、数年前から売却の話があったようですが、なかなか決まらなかったようです。しかし、コロナ禍でインバウンドが蒸発、社長も健康を害されたことで環境が一変、トントン拍子で話が進みました。私が個人で時計台観光の株式を全て取得したのが昨年10月です。しかし、時計台観光の経営はかなり厳しい状況で、それは今でも変わりはありません。FCの収益が良くてFCのロイヤリティだけでも運営ができていたのですが、直営店舗の赤字が足を引っ張っていました。私は、直営店舗が黒字になるまで、役員報酬はもらわないと社内に宣言しました。

 ーー個人で時計台観光の株式を取得したのですね。

 鴨田 個人で全株式を取得したのですが、本州で「魂心家むを展開しているトイダック役員たちにも頑張ってもらうため、彼らにも株式を持ってもらいました。黒字になって利益を生み出すようになれば、彼らにとっても良いわけですから。今は、個人で時計台観光の株式51%を持っています。私は、1年半から2年で直営の全店舗を黒字にして利益を出すと社内に宣言しています。まず血を止めて薬を塗って、治すのに3年はかかるとみています。
 現在も時計台観光は債務超過の状態ですが、昨年10月に就任して経費の見直しなどをしたことで、今年1月には単月でほぼ赤字を解消できました。2月はあまり良くありませんが、「味の時計台」から「魂心家」に転換した「東雁来店」が好調で、直営6店舗よりもこの1店舗の売り上げの方が多いという状況になっています。ここでは1日60万円を売り上げています。

 苫小牧の「味の時計台」も「魂心家」に転換して、さらにもう1軒「魂心家」を開けようと動いています。それでも、時計台観光の再生をしたくてしようがないのが今の率直な気持ちです。それには、味と価格の変更が不可欠。でも、まだ次の味が決まらなくて、ずっとメーカーと交渉している段階です。
 私が代表取締役に就いてから、時計台観光の社内は大きく変わってきました。「東雁来魂心家」への転換によって1日10万円に届かなかった店舗が、50万円を超えるようになって従業員の考え方が大きく変わりました。どんな言葉より、まず実践です。会社は明らかに変わってきました。

 当初は、立て直しのためにトイダックから人を連れてくるつもりでした。現場と本部の2人を連れてきて時計台観光の従業員たちと一緒に話をしたのですが、時計台観光の従業員たちの反応がとても良かった。トイダックの2人がいることで、かえってやりづらくなるのではないかと考え、2人は1週間で帰らせました。私にはワンマンなところがありますが、人の話を聞かないワンマンではありません。人の話を聞いた上で、自分で考えます。トイダックの2人を帰したのも、話を聞いた上での判断です。



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