どんぐり野尻雅之社長インタビュー「どんぐりの原点はお客さま目線の商品開発」

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 焼きたてパンのどんぐりが、江別市大麻の大型ホームセンター、ジョイフルエーケーの敷地内に「大麻店」を出店する。札幌市以外の初の店舗になり、江別市内の農家とのコラボレーションなど同店を新たな発信拠点とする考えだ。そこで、実父から経営を引き継いで8年になる野尻雅之社長(40)にどんぐりのパン作りにかける想いや「大麻店」のコンセプトなどを聞いた。
IMG_1089(写真は、インタビューに応える野尻雅之社長)

 ――創業はいつごろですか。

 野尻 1983年3月に札幌・円山で珈琲舎どんくりを母が開店したのがルーツです。店の前にあった大きなどんぐりの木に因んで名付けたそうです。同じ年の10月に豊平区にあった美園市場に移り、今度は父も加わりパン屋を創業しました。昔ながらの八百屋や惣菜屋などか並ぶ一角で、居抜きで始めたのがスタートだったと聞いています。その後、1992年に白石区南郷通8丁目の現本店に移転して「焼きたてパン どんぐり」として本格的に営業を開始しました。その後、新札幌のショッピングセンターに出店して以降、ほぼ2年毎に新規出店して現在は8店舗になっています。

 ――野尻さんが、社長に就任したのは何年ですか。

 野尻  2010年、私が31歳の時です。父である現会長は当時61歳で、周りの人たちから引退は早いのでは、と言われていたようでした。現在、会長は経営にはタッチせず取締役も外れています。創業者会長のような立場で大所高所からのアドバイスをしてもらっています。

 ――どんぐり35年の歴史の中で、パン作りの考え方はどういうものですか。

 野尻 パン業界では、創業時から異端児と見られています。パンは職人的な仕事なので、いかにして美味しいパン、品質の高いパンを作るかを追求します。しかし、パン職人の価値観とお客さまの求めるパンとの間には少なからずギャップがあります。私たちが一番大切にしていることは、本当にお客さまが食べたいと思っているパンを、鮮度良く温かい状態で出すということです。欲しいパンがどんぐりの店に行けば必ず揃っているというワクワク感を大事にしています。

 ――味と価格の両面からお客のニーズを満たすということですね。異端児と言われましたが、一般的なパン屋とどこが違いますか。

 野尻 一般的なパン屋がどんぐりのパンを見たら、『こんなのは、パンではない』と言うでしょう。例えば、ベーグルは輪の形にしますが、どんぐりではコッペパンを焼いたような形のベーグルを出している店舗があります。形は、ベーグルとはまったくの別物ですが、材料から焼き方まで普通のベーグルと同じ。業界の人からみると常識外ですが、食べやすくなったために売れる数が明らかに増えました。『ベーグルならこうだ』という固定概念を捨て、お客さまに『美味しい』と言ってもらえたらそれで良いと思っています。

 ――そもそも“異端児”は、どうして生まれてきたのですか。

 野尻 創業した両親がそういう考え方でした。両親は本格的なパン作りを学んでいないからこそ、自由な発想にたてたのだと思います。美園市場で営業していたある時、父はフランスパンを作っていて、あと5分間窯に入れて表面がパリッとした良い色になるのを待っていました。すると母が窯を開けて1本取り出して売ってしまった。母は『お客さまが欲しいって言っていることに応えるのが商売』とあっけらかんとしていたそうです。両親は喧嘩をしながらも異端児たる今日の社風を作っていったのでしょう。

 つまり、自分たちが満足する商品ではなく、お客さまに喜んでもらう商品を作ることに重きを置くようになったのです。父は常識が大嫌いという性格だし、母はお客さまファーストという性格ですから、そんな2人のやりとりから生まれてきたものがどんぐりの価値観ではないかと思います。

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