札幌商工会議所主催による『パワーアップ!札幌フォーラム』が9月7日、札幌市中央区北1西12のニトリ文化ホールで開催された。昨年11月に就任した岩田圭剛会頭が掲げた第36期(2016年11月~19年10月)基本方針は、札幌の元気で北海道経済を牽引する『パワーアップ!札幌』。今回のフォーラムはこの方針を進めていくきっかけとするため開かれたもの。札商関係者や行政関係者、学生、市民など約2200人が参加した。IMG_7649(写真は、『さっぽろ創生』をテーマにしたパネルディスカッション)

 最初に行われたのは、『若者政策コンテスト決勝大会』。これは札商が40歳未満の若者を対象に「札幌の活力向上に向けた取り組み」をテーマに政策提案を募集、応募数40件の政策提案の中から1次審査(書類選考)、2次審査(プレゼン審査)を通過した上位3チームが政策アイデアを競うもの。
 アドベンチャークラブ札幌は、ゲストハウスを運営するStaylinkの河嶋峻氏と日向洋喜氏のチームで、『子どもたちの新たな居場所づくり!ゲストハウスで世界とつながる民間学童保育』、チームクラークは北海道大学院生の鈴木栞衣氏、髙橋みづき氏、齋藤萌美氏、針ヶ谷元基氏の4氏からなり、『スマート農業実現に向けたプロジェクトチームの発足』、チームすまいるは、エヴァンスの高橋佳孝氏、アフェクションの阿部紗奈江氏のチームで『誰でも英語が喋れる街SAPPORO』をテーマにした政策提案をそれぞれ15分ずつパワーポイントでプレゼンした。

 基調講演は一般財団法人日本総合研究所会長の寺島実郎氏が『札幌の活性化に求められるもの』をテーマに話した。寺島氏は仏教哲学者、鈴木大拙の《外は広く、内は深い》の言葉を引用、外にあたるグローバル世界と内にあたる自らの個性、アイデンティティの相関関係からどこに進むかの視座をもたなければならないと指摘。「札幌、北海道は食のポテンシャルを考え抜いてみることが必要。これからの時代は食べ物を作れる地域が貴重になる。食材王国をどう生かしきるかが問われている」と指摘した。「もう一度札幌農学校のような農と食に関わる人材育成機関を設置して、国内やアジアから人材を引き寄せるべき」と訴えた。

 さらに札幌、北海道は米軍基地がないことなどストレスの少ない都市として政令市のトップ3に入っている点を掲げ、「子育てしやすい環境があり、札幌医大や北大医学部の高い医療水準から高齢者にとっても住みやすいマチ。子育て世代と高齢者にチャンスのあるマチという認識が浸透すれば人が集まり活性化するだろう」と話した。

 続いて『さっぽろ創生』をテーマにパネルディスカッションが行われた。「ひと・しごと・まち」を切り口に地域政策プランナー・前釧路公立大学長の小磯修二氏がコーディネート、札幌市長の秋元克広氏、札幌商工会議所会頭の岩田圭剛氏、寺島氏がパネラーになって議論を深めた。

 岩田氏は「札幌の起業率(開業率)は5・6%で全国23都市中13位と低い。福岡市は7・04%で全国トップ。開業率を増やすために札商は応援団となって後押ししていく」と述べたほか、札商と市、札幌医大、北大の4者で産学官医療連携協議会を立ち上げており、次の札幌を支える産業を振興していく姿勢を強調した。

 寺島氏は、「定住人口を増やすのは難しいが、移動と交流で活力を生み出すことはできる。首都圏から好きな時だけ農業に携わることができるような弾力的な仕事のプラットフォームを構築してはどうか」と提案。秋元市長は、「札幌は国際会議や学会などMICEのブランド価値が高い。また首都圏企業のオフィス開設のニーズもBCP(事業継続計画)の観点から増えている。さらに札医大の再生医療など医療分野でも人を惹きつけており、こうした分野での受け入れ態勢を充実させていくことが必要だ」と話した。

 その後、休憩時間中に行われた参加者による若者政策コンテストの投票の結果が発表され、3チームの中から最優秀賞が決まった。栄冠を手にしたのは698票を獲得したアドベンチャークラブ札幌。賞金50万円とトロフィーが岩田会頭から授与された。フォーラムの最後には、札商の正副会頭や各委員会委員長が檀上に参列、「札幌の活力で北海道経済を牽引しよう」と大会決議を行って終了した。


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