――道営時代は一度も黒字化しなかったそうですが、民営化以降の経営状況はどうですか。
吉田 民間になって3年目の平成20年度は、減価償却を入れて2000万円の赤字になったが、21年度は3000万円の最終黒字を計上した。瞬間風速かも知れないが、経常収支ベースで黒字の構造になっている。これまでは赤字で経営面では水面下にいたが、民営化になって以降初めて黒字になり水面上に頭を出したので、しっかりと名実共に民営の社会福祉法人として基盤を作っていく。
――民間同士の競争は激しい。生き残りのための方策は。
吉田 道営から民間になったら、サービスの低下などによって入所者がないがしろにされると見るかも知れないが、障害者自立支援法によって障害者は自ら施設を選んでサービスや利便性の低い施設を敬遠して別の施設に移る可能性が常にある。施設と利用者は対等の契約関係にあるから絶えずサービス向上に努めなければならない。
今年4月から札幌市が運営してきた知的障害者施設の指定管理者として運営に乗り出している。同施設の指定管理には3~4法人が名乗りを上げていたが、当事業団が選考を経て受注し、民間の社会福祉法人として事業拡大の契機を掴んだ。
2施設の定員割れの解消のために通学者の利便を考慮した送迎バスの運行も始めた。市が運営している時には送迎はなかったが、そういうサービスをしないと入所者が集まらず、他の施設に移ってしまうからだ。
――事業団が運営する施設を今後も増やしますか。
吉田 現在は伊達市の知的障害児(者)施設「太陽の園」、「だて地域生活支援センター」のほか白糠町の肢体不自由児施設「白糠学園」、岩見沢市の身体障害者施設「福祉村」、札幌の知的障害児施設「もなみ学園」の5施設と札幌市の知的障害者2施設を運営しているが、札幌市が新たに募集した相談支援センターの指定管理にも手を上げた。4者のプロポーザル提案があったが、これは受注できなかった。
評価項目で何点という結果が出ており、我々の足りないところを客観的に見ることができた。それまでは事業団が一番と思っていたが、もっと素晴らしい組織があると肌で分かるだけでも効果は大きい。原点を見つめなおすいい機会だった。
――道の関与団体から民営に移行するには組織にとって大事なことは何でしょう。
吉田 いかにして黒字にするかが最大の仕事。儲かるためには、いかにいいサービスを提供するか、それは車の両輪だ。黒字にならないと良いサービスができない。民間に任せて、アイデアを出して競走してサービスを高める。民間で競争原理に晒されながらチャンスをものにすることが大切だ。我々は、10月にはグループホームを立ち上げて新しい展開をしようと考えている。伊達にも新しい作業所を作りたい。
北海道社会福祉事業団は、道から60億円の財政支援を最後に、道の関与団体から民間の社会福祉法人に移行した。民営化4年目にして黒字を確保、独り立ちできる見通しを得た。道は、財団法人や社団法人の出資金返還などを要請しており、道社会福祉事業団の先行例を参考に、民営化に舵を切る関与団体が続くことが期待される。
(この項終わり)