道庁職員や札幌市職員など公務員になったら、どこまで出世したいのだろうか。言うまでもなく、職員の最高位は道庁であれば副知事、札幌市役所なら副市長だ。道の場合も札幌市の場合も3人がその職を担っている。
道庁の知事部局(本庁と出先機関)で約1万7000人、札幌市役所は約1万5000人の職員がいるから、副知事や副市長になるには文字通り「万にひとつ」の確率に近い。それでも公務員になった限りは、最高位を目指すというのは、至極当然の出世欲というものだろう。
副知事や副市長になって、2~4年務めればそのポストに相応しい天下り先が用意されている。名誉と報酬は約束され老後の心配もない。副知事や副市長を目指すからこそ、仕事への責任感と意欲が自然に生まれてくる、と思っていた。
ところが最近、職員が望む最高位は副知事や副市長ではなくなっているのだという。実際、道庁や市役所で職員に聞いてみると、道では部長、市役所では局長という答えが意外に多い。
なぜなのか。道庁の例を取り上げてみよう。
「副知事の仕事は、知事と道議会ばかりを見ていて、生産性があまり感じられない。どちらにも恨まれたくないから神経をすり減らして、結果、そのポストに就いているという優越感だけしか心の支えが無くなっているように見えるから」
とりわけ、高橋はるみ現知事になってから、この傾向が強くなっているようだ。
もちろん副知事や副市長になれるのは万にひとつだから、知事や市長の個性に合うことや、先輩副知事、副市長の出身部局とはダブらない部局に在籍していることなど時の巡りあわせが大きな要素を占めている。それでも、そのポストを目指すからこそ組織が活性化するのは確かだろう。
最近の新入社員は、海外勤務を嫌い大学生も海外留学に意欲を示さないという。公務員がトップを目指さないのも、ある意味で同根なのかも知れない。「家族」「社会」の絆が薄れつつある今、「組織」の求心力も変化しているとすれば、怖い感じがする。