ーー仕入れ面では、大手と違う方法やノウハウがあるようですね。
中塚 大手スーパーが、特売の際に、ある商品を100個仕入れたとしても、100個がすべて売れることはまずありません。残った店頭商品があるため、問屋にはその商品が卸せず、在庫として滞留してしまいます。日数が経つと、問屋は、在庫を抱えていても仕方がないので、価格を下げてでも卸そうとします。そうした商品を私たちが見つけ出すことで、安く仕入れることができます。
このように、メーカーや問屋との密な連携が、良い商品を安く仕入れることに役立っています。また、例えばある大手スーパーが、メーカーに一つの商品を500個発注したとします。そうした場合、メーカーの製造ロット単位に、あと数十個足りないケースも出てきます。数十個分を「キテネで通常より安く引き取ってもらえないか」という話が舞い込むこともあります。菓子ならシーズンを過ぎたが、賞味期限が十分にある商品などを仕入れるルートもあります。
このような例は、グロサリー系の食料品だけでなく、青果、鮮魚にも言えることで、各部門が良い品質の商品を安く仕入れるルートを複数持っていることが強みです。こうした強みは、「キテネに行ったら、面白いモノがあった」とか、「安いモノがたくさんあった」などの評価に繋がります。そういったことをやり続けているから、お客さまの支持を得ているのではないかと思います。
ーー「手稲店」の客層は。
中塚 SNSが活発になる前は、年齢層は比較的高かった。お子さま連れや若い夫婦の方々には、なかなか来てもらえなかった。ところが、SNSを始めてからは、いろいろな年代のお客さまに来てもらえるようになりました。今は、X、インスタグラム、スレッド、Facebook、TikTokを私が運用しています。主力は、XとインスタグラムとTikTok。運用して初めて分かったのですが、年配の方々はTikTokをやっていないし見ていません。でも、娘さん世代はやっています。すると、キテネのTikTokを見た娘さんが、「お母さん、キテネで今日はこれが安いよ」とか、鮮魚部門のの社長もTikTokをやっているので、「お母さん、魚屋さんにはこんなものがあるよ」と言ってくれて、親子で買い物に来てくれるようになりました。
ーーxはいつから始めたのですか。
中塚 xは、2021年から始めました。何でもネタにするので、「手稲店」の周辺でゲリラ豪雨があった時には、店の前にできた大きな水たまりを車が通るところをあげたこともあります。また、年末に店舗に入りきれないお客さまの様子あげたこともあります。私の友人たちからは、「何でもネタに使うね」と言われましたが、東京のテレビ番組から取材の依頼が来たこともありました。そんなこともあって、全国的に「キテネ食品館」という名前が広がりました。
ーーSNSを活用した店舗展開は効果があると。
中塚 SNSを投稿するのは、私や鮮魚部門のトップです。Xにあげるのは、ゲリラ豪雨や年末の行列以外は、大体毎回同じで、「おはようございます」から始まって、「本日の激安品はこれ」というものですが、それをずっとやり続けています。大手スーパーも、SNSを使っていますが、大手にはコンプライアンスがあるので、真面目であまり面白いものとは思えません。あげる以上は、興味を持ってもらいたし、店に行きたいと思ってもらえるように工夫しなければなりません。その点、「ラッキー」のSNSは独自性があって、私も好きです。「ラッキー」のイメージは、質が良くて価格も高そうですが、商品にこだわりを持っていて、「当店はこうだ」というアピールをしています。xは使っていないようですが、インスタやFacebookには、「ラッキー」のカラーがしっかりと出ていていると感心します。
聞くところによると、「ラッキー」も社長が自ら手掛けているようです。社員がSNSに取り組むと、あげて良いのかどうかの基準が分からずに、どうしても守りの投稿になってしまいます。安全投稿ほど面白くないものはありません。それなら、最初から投稿しない方が良いというのが、私の考えです。やはりSNSは、トップがやらなければだめではないでしょうか。
ーー従来の強みに加えて、SNSによって客層が広がってきたと。売り上げも伸びていますね。
中塚 おかげさまで、来店客数はここ2年間くらい、前年比105%で推移しています。売り上げは110%ぐらいになっていて、直近では年間約14億円です。SNSを使っていなければ、これほど認知されることはなかったでしょう。私も、たまにはテレビに出ますが、もちろんテレビの効果はあります。でも、どちらかというと一時的。その点、SNSはアップする限り、一定の効果が継続します。