2023年11月30日、ススキノの基点となる地に複合商業施設「COCONO SUSUKINO」(札幌市中央区南4条西4丁目1-1)が開業した。ダイイチ(本社・帯広市)はその施設の地下2階、地下鉄すすきの駅と直結したフロアに「すすきの店」をオープンさせた。帯広に本社を置くダイイチにとって、札幌の本丸に攻め込む戦略的な意味を持つ店舗。必ず成功させなければならない使命を帯びる。(写真は、「ダイイチすすきの店」)
(写真は、長方形の見通しの良いフロア)

 オープン初日、開店時間に地下鉄コンコースと直結した扉が開くと、「ダイイチすすきの店」に多くの客がなだれ込むように入ってきた。旧ラフィラ地下1階にあった「イトーヨーカドーすすきの店」がラフィラとともに閉店して3年半、「イトーヨーカドー」から「ダイイチ」に変わったが、多くの人がこの地でのスーパーマーケット復活を待ちわびていたことを示すシーンだった。

(写真は、平台に並べられた惣菜商品)

 旧ラフィラ建て替えにあたり、当初は地権者でもあるイトーヨーカ堂(本社・東京都千代田区)が「COCONO SUSUKINO」に出店する予定だった。しかし、イトーヨーカ堂の総合スーパー撤退の波が北海道にも押し寄せ、新施設オープン1年前に資本業務提携先のダイイチに出店を依頼、ダイイチはそれを受け入れた。

(写真は、畜産コーナー)

 ダイイチは、2004年7月に「八軒店」(札幌市西区)で札幌圏に進出。以降、着実に店舗を増やし、2021年11月には「平岸店」(同市豊平区)をオープンさせた。それに「すすきの店」が続き、札幌圏進出から19年間で店舗数は7店舗に増えた。単純計算で2・7年に1店舗というハイサイクル出店を達成してきた。

(写真は、セブンプレミアムのコーナー)

 札幌圏の「ダイイチ」店舗が郊外型の単独店舗であるのに対して、「すすきの店」は地下鉄直結の都心型、しかも大型商業施設内の店舗。これまでの販売データが通用するかどうかは未知数。「イトーヨーカドーすすきの店」時代の販売データは共有しているものの、「イトーヨーカドー」と「ダイイチ」では強みが違う。梅田圭佑店長は「ヨーカドー時代に売れていた商品群は継承して販売しますが、当社の持ち味を生かした商品も多数揃えています。当店のMD(販売政策)は、普段の食生活を支える品揃え。奇をてらわずスーパーマーケットの基本を踏襲したMDを展開します」と言う。

(写真は、「布袋」商品を揃えたエンド)
(写真は、十勝産品を集めたエンド)

 そこには、帯広発のスーパーマーケットというアピールを抑え、「札幌圏で育ててもらった札幌のスーパー」という地場色を訴えようとする考えが見える。中国料理「布袋」の商品をエンド展開しているのもその一端だ。もっとも、十勝色は通奏低音のように「すすきの店」でも踏襲されており、「北海道十勝発」のエンド展開や帯広の中国料理「美珍樓」監修の中華、「北海道村」のジンギスカンなども揃えている。当然、「セブンプレミアム」の専用コーナーも展開している。

(写真は、エントランスホールから見た「ダイイチすすきの店」)

 店舗面積は約600坪で、「イトーヨーカドー」時代よりもすっきりと見通しの良い長方形の売り場になっている。中央にエスカレーターがあるのは、「イトーヨーカドー」時代の面影を残す。ただ、惣菜製造のバックヤードが建物の構造上、店舗の端になっており、惣菜商品をアピールするためフロア中央に平台を多用した展開になっている。

 店舗全体のイメージは、ススキノの華やかさとは一線を画したオーソドックスなテイスト。さる物販系企業のトップは、「もう少しワクワクするような仕掛けがあってもよいのでは」と話した。2024年7月は、ダイイチが札幌圏に進出してから20年になる。「すすきの店」の成否が、20年という節目の明暗を決めることになりそうだ。オープンしたこの日、お客を誘導し、商品を揃える若園清社長の姿があった。「いらっしゃいませ」、「ありがとうございます」、その言葉には力があった。※店内写真は許可を受けて撮影しています。


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