アークス(本社・札幌市中央区)の中核企業、ラルズ(同・同)は、なぜ、札幌市内に新規出店をしないのかーー。こうした疑問が、業界関係者だけでなく、消費者の間からも出ている。年末に向けて「ココノススキノ」や「BiVi新さっぽろ」の新しい商業施設が誕生し、そこには「ダイイチ」や「コープさっぽろ」が新店舗を構える。ラルズにも当然、出店の選択肢があったはずだが、沈黙を守っている。(写真は、ラルズ本社)

 この3年間だけを見ても、新規店舗に関してラルズの沈黙が際立っている。遡ってみると、2020年11月に居抜きで出店した「スーパーアークス東苗穂店」(東区)以降、新規出店がない状態だ。他のスーパーマーケットはどうか。コープさっぽろ(本部・札幌市西区)は、2021年4月に「しろいし中央店」(白石区)、2022年10月に「そうえん店」(中央区)を出店、2023年11月30日には「BiVi新さっぽろ店」(厚別区)を新規出店する。

 イオン北海道(本社・札幌市白石区)は2021年度と2022年の出店はなかったが、2023年3月には小型店の「マックスバリュエクスプレス新川店」(北区)、10月に「マックスバリュ山鼻店」(中央区)、11月22日には建て替えによる「イオン南平岸店」(豊平区)をオープンさせる。ダイイチ(本社・帯広市)は、2021年11月に「平岸店」(豊平区)、2023年11月30日には「ココノススキノ」地下2階に「すすきの店」(中央区)を出店する。

 このように、各社が札幌市内で建て替えを含めた出店攻勢を続ける中、ラルズの“静けさ”は不気味でさえある。ラルズの言い分はこうだ。「土地代、建設費が上がっている中で新店を出店しても採算が合うまでに、長い期間を要する。とりわけ、この1年間の建設費高騰は異常でさえある。新店を出すことよりも、既存店をしっかりと手入れして、お客さまに喜んでもらう方が先決と考えている。今後は小型店の既存店リニューアルにも取り組む」(猫宮一久社長)

 財務体質が健全なラルズに新店を出す資金がないわけではないが、今はその時ではないということなのだろう。こうしたラルズの戦略がどういう結果を導き出すだろう。得意のM&A(企業の買収・合併ではなく、マインド&アグリーメント)による店舗承継が進むのか、他社と差をつけられているのかーー5年後、10年後を見る必要がありそうだ。


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