アークス(本社・札幌市中央区)は2023年10月3日、アマゾンジャパン合同会社(同・東京都目黒区)とネットスーパー事業で協業すると発表した。アークスの横山清社長がアマゾンと組むことを決めたのには、3つのポイントがある。(写真は、アークスとアマゾンが協業で始める「アークスオンラインショップ」の共同記者会見。左からアマゾンジャパン合同会社・荒川みず恵Amazonフレッシュ事業本部長、アークス・横山清社長、ラルズ・猫宮一久社長)
横山社長は、かねてアマゾンなどネット企業と連携して、インフレと戦える価格体系を備えることが必要と訴えてきた。昨今の食料品価格の高騰は、異業種との連携による戦術多様化を図らなければならないという、横山社長の判断を後押ししたことは容易に想像できる。こうした食品スーパーを取取り巻く土壌の上に、アマゾンとの協業に踏み切った3つのポイントの1つは、アークスが加盟する新日本スーパーマーケット同盟のパートナーであるバローホールディングス(本社・岐阜県恵那市)の存在。同社は、子会社のバロー(同・同)を通じて2021年6月からアマゾンと協業、ネットスーパーを展開している。この事業が順調に進んでいることから、横山社長はアマゾンと組むことに不利益はないとの判断に傾いた。
2つ目は、アークスの財務力だ。アマゾンに呑み込まれないとも限らない中で、アークスには豊富な資金力がある。かつて、横山社長は1000億円級のM&Aができる資金力があると話していたが、こうした財務体質がアマゾンとの協業に踏み込んでも、経営はブレないという確信に繋がった。
3つ目は、コープさっぽろ(本部・札幌市西区)が展開している宅配トドックへの対抗だ。宅配トドックは、組合員が対象で週1回の定期配送だが、2023年3月期決算の売上高は、1013億8600万円。北海道全域における、食品雑貨のインフラ機能を果たしている。コープさっぽろが、宅配トドックで蓄積したネットの知見にアークスは、遠く及ばない。
2021年10月からは、「アークスオンラインショップ」の自前展開を始めたが、両者のネット力には彼我の差がある。今回、アマゾンと組むことによってネットリテラシーは格段に高まる。アマゾンとの協業で得た知見を、「アークスオンラインショップ」のブラッシュアップに利用することもできる。横山社長は、「トドックではカバーできない部分もあるので、その部分を埋めて道民の豊かな生活に貢献したい」と話す。
横山社長は、「アマゾンとの協業は良いタイミングだ」とも述べた。アークスは、アマゾンと組むことでネットに追いつく時間を手に入れた。