――札幌圏6店舗目の「平岸店」(札幌市豊平区)も好調で、札幌展開は軌道に乗ってきました。

 若園 札幌に出た理由は、帯広や旭川のマーケットは、いずれ飽和状態になると考えたからです。今から約24、5年前のことです。当社の生き残りを考えた時、大商圏である札幌に出店しなければならないと。当社は、昭和50年代前半に、釧路に出店して失敗した経験があります。当時セルコグループに入っていて、釧路のセルコグループだった企業から店舗を引き受けてほしいと話が来て、3店舗を同時に引き受けた。最終的には4店舗まで増やしましたが、5年で撤退しました。

 それ以降、当社も頑張って、それなりにスーパーとして認められるようになってくると、いろんな地域から出店の話が舞い込んできました。釧路や北見、網走、中標津と道東方面から話が来るようになりました。その中で、札幌の出店の話は皆無でした。しかし、私だけでなく、歴代トップは、同じリスクを持って挑戦するのなら、札幌の商圏に出店すべきだという思いがありました。それで、今から19年前に「八軒店」(札幌市西区)を出店しました。そんな経緯でスタートして、やっと札幌圏でも少し蕾が開き始めた段階です。

 でも、まだまだです。特に最近感じるのは、やはりラルズさんは強いなということ。確かに横山清社長の際立ったリーダーシップもありますが、最近でも本当に驚くくらいの数字を出しています。当社には帯広を出発点にして歩んできた65年の歴史がありますが、ラルズさんには札幌で歩んできた62年間の歴史があります。その歴史の蓄積で、ラルズさんは札幌のお客さまに受け入れられている。それが何なのかは、もっともっと分析しなければなりません。

 ――今年秋には、ススキノに誕生する新しい複合商業施設「ココノスキノ」に出店します。イトーヨーカ堂が出店するはずでしたが、ダイイチになった理由は。

 若園 昨年の秋頃までは、イトーヨーカ堂が出店することで進んでいました。イトーヨーカ堂はススキノ十字街ビルの地権者でもありますから、そのヨーカ堂が自ら営業する形で話が進んでいました。ただ、2、3年前から非常にヨーカ堂にはアゲンストの風が吹き荒れています。そうしたことから、首都圏に経営資源を集中させ、地方には投資はしないという方針になったようです。それで、資本業務提携先である当社に可能性を求めてきたと。当社としては、せっかくのお話なので、急いで調査をしたうえで、引き受けさせていただくことにしました。当社は、ヨーカ堂からスペースを借りることになります。

 ――ダイイチにとって、商業施設に入るのは初めて。そういう目新しさと都心部に出るということで、ダイイチの知名度アップにも繋がる。ただ、家賃が高いと評判です。勝算は。

 若園 確かにランニングコスト面で、月額家賃は決して安くはない。ただ躯体工事その他は進んでいたので、そこに対する投資は必要ない。出店者としての通常の投資だけで、何とかやりくりできます。インバウンドや業務筋の利用などが期待できるという話もありますが、当社は食品スーパーとしての基本をしっかりやって、それにプラスして業務筋の皆さまにも、ご利用いただければありがたい。インバウンドの皆さん向けにも、テイクアウトできるような、簡便性のあるお惣菜などを提供したい。

 世帯数が少なく、単身比率が高いエリアですが、スーパーマーケットがないエリアでもあります。しっかりと食のライフラインを構築して、単身比率が高いことを想定した品揃えの見直しもきっちりと行っていきます。最終投資を進めている段階ですが、今一度、損益分岐点の洗い直しもしています。内装は、プレゼンで丹青社にお願いしました。丹青社は、当社が大型化した平成8年の芽室店を手掛けています。

 ――オープン時期は。

 若園 まだ、はっきりオープン日は確定していませんが、私たちとしては遅くても11月の半ばまでにオープンしたい。

 ――どういうお店になりそうですか。

 若園 札幌の中心部、ど真ん中ということと、大型複合商業施設の中に出店するという、今までなかったことへの挑戦になります。生鮮、惣菜を基本とした店づくりをしていきます。「平岸店」は札幌の標準的なマーケットにある店舗で、店舗はやや小ぶりですが、札幌圏の標準的な店舗という位置付けをしています。その「平岸店」が、もっと集客できるように社内的には頑張れと言っています。商圏の特性からか、買い上げ点数が他の郊外型の店舗から比べると、少し足りない。もう一品を買っていただくには、どうしたらいいかということと、今一度店づくりのマッサージをするように指示しています。高額商品などへの挑戦ではなく、現路線を維持、継続しながら本当に質の高い商品作りをしてほしいと注文しています。

「平岸店」を底上げした状態で、それをベースに今度はススキノで新たな展開をしたい。これまでの札幌展開では、「帯広、十勝出身のスーパーマーケット、ダイイチです」と看板にも書いていました。「八軒店」から19年が経過して、札幌でもダイイチといえばスーパーと言ってもらえるようになってきました。ススキノの店舗では、札幌に進出した時の帯広、十勝のスーパーであることををもう1回思い起こすと同時に、札幌で培った店づくりをプラスアルファしていけば、他社との差別化になると考えています。札幌のお客さまの志向をもっともっと取り入れていきたい。



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