――2009年10月にアークスグループ入りしましたが、社風も違えば考え方も違っていたと思います。社員に戸惑いはなかったのでしょうか。
楠美 意外とすんなりとグループ入りできたと思います。ラルズも同じ札幌圏でスーパーを展開しており、身近なライバルでしたが、互いに顔を合わせる機会も多かったので、ある程度気心は分かっていました。社風は違っていても、無理なくグループ入りできたと思います。そういう意味では、今後グループ入りするスーパーにとって当社が参考になればという思いもあります。
――アークスグループの中で、ラルズと東光ストアはほぼ同じ商圏にあります。グループ入りして13年ですが、すみ分けはできていますか。
楠美 アークスグループ入りする前から、店舗間の競合はある程度ありましたが、お客さまの年齢層のほか品揃えや価格は、当時からお互いに特徴がありました。当時からすみ分けがかなりできていたので、今でもその状況が続いています。例えば、東光ストアの「行啓通店」とラルズの「スーパーアークス山鼻店」は、徒歩5分くらいですし、平岸地区の店舗も近い立地です。東光ストアの半分ぐらいの店舗はラルズの店舗と近い距離にあります。それでも、お互いに売り上げも利益も出しながらきていますから、お客さまが上手に使い分けているのではないでしょうか。
そのことによってグループとしてのシェアを高め、強さを出していけるとみています。今回、ダイイチさんの「平岸店」(札幌市豊平区)が、当社とラルズの店舗近くにオープンしたり、山鼻地区でも当社とラルズの店舗近くにコープさっぽろさんが「やまはな店」を出店したりしています。当初は売り上げ低下を懸念しましたが、心配するほどの影響は今のところ出ていません。これもグループ力があるためだと思います。
――そうしたすみ分けができているのは、アークスグループが増えていく中で参考になりますね。ところで、新規出店に関してはどう考えていますか。
楠美 新規出店をしたいのはやまやまです。直近で出店したのは2015年4月の「東区役所駅前店」(札幌市東区)。それ以外の店舗はさらに店舗年齢を重ねています。2022年3月に「行啓店」の一部をリニューアルしましたが、少し老朽化しているところや今の時代にそぐわない売り場、品揃えを改装する取り組みを、これまで3年計画で進めてきました。例えば、コロナ禍で冷凍食品が急激に伸び、簡便商品、デリカも伸びています。店舗によっては、この成長分野の売り場が狭かったり冷凍ケースも取り替えなければならなかったり、課題を持っている店舗があります。それほど大きな費用をかけなくてもできる改装ですから、今年度も継続してリニューアルを進めます。「行啓店」に次いで、2、3店舗をリニューアルする予定です。
――新店は、札幌市内しか出さないのでしょうか。
楠美 そういうことでもありませんが、私どもの商売の仕方を考えると、札幌中心にならざるを得ない。それぞれのエリアには、グループ会社がしっかりとありますから出るところがないのも事実。新店はコスト的にも大変なので、居抜きなどを考えたい。当社の売り上げや利益の柱になっているのは、地下鉄駅立地型や都心型の店舗ですが、例えば売り場面積が200坪から300坪ぐらいでも十分商売できるようなノウハウがあります。そのような物件があれば、周りの競合状態を勘案しながら出店することもあり得ると思います。かといって、急ぐ必要性はありません。どういう時代になってくるか分からないですからね。
――楠美社長がベンチマークしている食品スーパーはどこですか。
楠美 最近よく見に行っているのはヤオコー(本社・埼玉県川越市)の新店です。何か新しい取り組みが必ずあるからです。ライフコーポレーション(大阪本社・大阪市淀川区、東京本社・東京都台東区)、ヨークベニマル(本社・福島県郡山市)、サミット(同・東京都杉並区)の店舗にもよく行きます。