東光ストア楠美秀一社長インタビュー「50周年の蓄積を生かして次の成長を目指す」

流通

 ――「質の東急」と言われた時代がありました。日々の活動の中でブランド力が磨かれていったのでしょうね。
 
 楠美 お客さまの信頼度に100%お応えすることはできなかったかも知れませんが、「質」に関しては高いものがあったと思います。ともあれ、私どもだけではなく、アークスグループをはじめ地場の食品スーパーはしっかりと商売を続けていますが、大型スーパーは北海道から撤退するケースも出ています。それぞれの地域で長い間商売しているスーパーは、地域の情報を得ながら、地域の特性を生かして商売してきました。そのことに強みがあるのではないでしょうか。大手スーパーは、画一的な商売ではだめだということで、地域に権限を与えて地域色を出そうとしていますが、地域に密着した商売の仕方を一番よく理解されているのは、やはり地域のお客さまということなのでしょう。
 
 ――50周年に向けて消費者への還元策は。

 楠美 50周年を迎えて、お客さまのご愛顧に何らかの形で還元しようと、今年3月から感謝セールを始めています。毎月の販促の中で「50周年ありがとう感謝セール」というタイトルで大売り出しを行っています。10月の創業月にそのピークを迎える流れで取り組んでいます。

 ――感謝セールの具体的な中身はどんなものになりますか。

 楠美 生鮮は、通常の価格政策を少し強めた中で、もう一度、品揃えや品質をしっかりアピールしていくことにしています。また、北海道の産物を対象とした販促も加えながら実施しています。EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)に関しては、「ハッピーロープライス」というキャッチフレーズで昨年からスタートしていますが、50周年の今年はさらに品目を増やしています。
 
 ――EDLPの商品は何アイテムくらいになりますか。

 楠美 現在は約500アイテムです。生活応援という形で1ヵ月間や2ヵ月間取り組んでいるものは、約3000アイテムあります。さらに、もう一段の値ごろ感を出した商品を約500アイテム増やそうと考えています。
 
 ーー「東光ストア」の店内にはテナントがたくさん入っている特徴があります。
 
 楠美 当社の店舗には、専門店のテナントが多く入っていて、現在は約120社のテナントがあります。テナントの店舗数は約150店舗。惣菜や水産を手掛けており、テナント会も組織しています。創業当時から出店してもらっているテナントもありますから、そういう意味では一心同体で50年間を歩んできたと言えます。店舗内にいろいろな業種の専門店が入っているのは、一般的な食品スーパーにはない店づくりだと思います。直営の水産コーナーとの横にテナントの水産コーナーが並んでいたり、直営の惣菜コーナーとテナントの惣菜コーナーがあるなど、いい意味での競争関係になっています。
 
 ――テナントとのコラボで展開しているスーパーは少ないですね。
 
 楠美 あまりないと思います。テナントの入居数は、当社が一番多い。精肉コーナーもアークスグループ入りする前までは、直営が約3割で、残りは東急百貨店グループの精肉専門会社が運営していました。アークスグループ入りを機に精肉部門はオール直営化に切り替えました。
 
 ――50年間積み重ねてきた歴史をベースにこれからの展開があると思いますが、コロナ禍やウクライナ問題、原料高という状況でスーパー業界の先行きをどうみていますか。
 
 楠美 コロナ禍で先が見えない状況が現在も続いていますし、今回のロシア・ウクライナの問題が発生してからは、本当に先行きが見通せなくなりました。ただ、スーパーの基本は、商品力、サービス力と従業員のお客さまに対する接客力に帰結するのではないか。どんな時代になってもそこは変わらないと思います。
 
 ――東光ストアの客層は年齢的に高いようです。高齢者は価格にはシビアだと思いますが、顧客の年齢層を広げる取り組みは。

 楠美 お客さまの分析をすると、60代が中心になっていますが、地域性があって、当社の地下鉄沿線店舗は夕方から夜にかけて単身者の利用が増えます。店舗の立地条件や客層に応じた商売が組み立てられるかどうかも、今後は一つのポイントになっていくとみています。店舗では、「らくらく便」という名称で配達サービスをしてます。65歳以上の方は無料なのですが、高齢者の配達件数を見ると、一番多いのが「真駒内店」(札幌市南区)で、次は「プロム山鼻店」(同市中央区)。街中の店舗で配達件数が多い。配達は1ヵ月のトータルが約2万3000件で、アークスグループの中では多い方だと思います。配達コストがかかりますが、それだけの買い物をしていただいています。「らくらく便」利用者の客単価は通常の客単価の3倍です。配達エリアは限られていますが、欠かせないサービスになっています。
 
 ――ネットスーパーへの対応は。

 楠美 時代の流れからいっても必要性はあると思います。ただ、それで利益を稼いでいるところはあまりないと思いますから、よく検証していかないといけないでしょう。グループのラルズが「アークスオンラインショップ」として先行して取り組んでいるので、一定程度運営が軌道に乗れば私たちも手掛けることになると思います。

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