日本生産性本部(本部・東京都千代田区)サービス産業生産性協議会が毎年発表する顧客満足度調査のコンビニエンスストア部門で、5年連続首位の「セイコーマート」。その「セイコーマート」を運営するセコマ(本社・札幌市中央区)の丸谷智保会長が、価格のホスピタリティを実現するために、「付加価値ではなく、削減価値」という概念を標榜している。(写真は、札学院大の「学生ビジネスプランコンテスト」で基調講演するセコマ・丸谷智保会長)

 コンビニの売上高は、コロナ禍にあって前年同月を割り込む状況が続いている。セイコーマートも昨年3~5月こそ前年を下回ったものの、6月以降は前年を上回る状況で推移、未だに水面下から浮上していない全国コンビニと一線を画している。そんな中、セコマの丸谷会長は、16日に行われた札幌学院大学の「学生ビジネスプランコンテスト」で基調講演を行い、セイコーマートが全国コンビニを上回る売り上げを続けている理由の一端を紹介した。

 その一つが「削減価値」という概念だ。丸谷会長はこう言う。「北海道は高齢化社会の先進地域と言えるほど高齢化が進んでいる。『セイコーマート』の売り上げは、一般的な給料日や年金支給日、生活保護支給日で山があるが、2007年に年金支給日が給料日を上回り、13年になると生活保護の支給日が給料日を上回った。現在、売り上げの山は年金支給日→生活保護支給日→給料日の順。高齢化社会の消費行動は、社会保障収入に大きく左右されるということ」と高齢化社会での消費行動の特徴を解説する。

 こうしたマーケットの状況で、コンビニが向かうべき方向はどこか。丸谷会長が続ける。「多くのコンビニは付加価値を付けて高く売るマーケティングを採用している。しかし、もうそんな社会ではない。付加価値ではなくて削減価値という価値を生み出すことが必要になっている。高齢化社会ではプラスアルファでお金を払える人が少なくなっている。ただ、売価を下げるだけでは我々の収益が取れず継続性がなくなる。売値を下げるディスカウントではなく、原価を下げることによって売価を維持しつつ我々の儲けを生み出すことが必要になる。これを削減価値と言う。付加価値は結局、お客さまに払ってもらうもの。しかし削減価値は我々の中の努力で価値を見出すものだ」と強調した。
「削減価値」こそ、今後のコンビニを含めた小売り企業が目指すべき方向であることを示した。


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