米コーネル大・食品小売マネジメントの泰斗、ジャーマン名誉教授とドレイク教授が北大クラーク会館で講演

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 社団法人新日本スーパーマーケット協会(会長・横山清アークス社長)は22日、北海道大学クラーク会館で米コーネル大学の食品小売業を専門とするジーン・A・ジャーマン名誉教授とウィリアム・E・ドレイク教授の特別セミナーを開催した。道内外のメーカーや卸、食品小売業などから約250人が参加、米国食品小売業の最新事情やカトリーナなど大規模な自然災害でライフラインを担う食品小売業の役割などについて3時間の講演を熱心に聞き入った。(写真は、ジャーマン名誉教授=左とドレイク教授。クラーク会館の壇上)
 
 ジャーマン名誉教授は、米国の食品スーパーのトレンドについて講演。業界が直面するマクロ的な影響として次の6つを掲げた。①景気後退②消費者の変化③新しいテクノロジー④消費者が求める利便性⑤業界の競争⑥新たな位置づけ――で、景気後退を受けて消費者は高級店からバリュー店へ、有名ブランドから自社ブランドへ、珍しいものからベーシックなものへと指向が変化しており、「米国では自社ブランド品が08年の19%から13年には22%になる。欧州でも自社ブランド品は30~40%以上を占める。日本の6%という比率はまだまだ拡大するのではないか」と食品スーパーのPB(プライベートブランド)は世界的に拡大傾向にあると指摘した。
 
 また、スマホなどソーシャルメディアによって情報や決済が行われ、小売業は立地がすべてではなくなり、スマホのアプリを利用したデリバリーサービス(宅配)が再び台頭、英テスコは90分でオンライン予約の商品を揃えて販売員がトランクに詰めるドライブスルーも手がけていると報告した。
 
 さらに消費者が地産地消に関心を高め、地元で獲れる野菜や青果の専門コーナーを設ける例が増えており、ウェブマンズでは70店舗に1200の農家が生鮮野菜などを供給してうまくいっていることを紹介。
 
 米国の食品スーパーは他業態から様々な競争に晒されておりアマゾンも新鮮野菜を扱うほどで、「食品スーパーは自社の正しい位置づけを見出すことが最大の課題。簡単なことではないが、質なのか、バリューなのか、その二つの組み合わせなのか――貴社にとって何が最も効果的かをきちんと把握することが大切」と述べた。
 
 続いて講演したドレイク教授は、05年8月にメキシコ湾岸に上陸したハリケーン・カトリーナによる大規模被害によって、災害対応の考え方が転換したことを指摘し、「食料、薬、水など政府が持っていないサプライチェーンの基盤を持つ食品小売業が災害時にはリーダーシップを発揮する。ウォルマートが効果的に対応できたのは、①広範囲にわたる店舗と流通センター網②現地の知識③サプライチェーンの専門知識④組織的文化と価値観⑤断固たるリーダーシップ」と分析。最も信頼できる産業として10年の調査でスーパーマーケットと病院が29%で首位、銀行(20%)、電力・ガス会社(19%)を上回っていることも紹介した。
 
 ドレイク教授は、「組織的文化と価値観は時間をかけて創られていくもの。報われるのはこうした災害時だが、日々の業務が重要だ」と参加者たちに訴えた。
 
 新日本スーパーマーケット協会の横山会長は、前日21日に自身が社長を務めるアークスのユニバース子会社化に伴い、ユニバース本社がある青森県八戸市で記念行事を終えたばかり。
 
 横山氏は、「流通産業は高度なレベルの経営でないと生存できなくなる。流通業を科学するということは突き詰めた合理的な戦略を持ち、それをどう消費者の日常生活と関連付けるかということ。コーネル大2教授のセミナーが、北海道の流通小売業の新しいスタートになるものと確信している」と自らに言い聞かせるように挨拶していた。

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