アークス(本社・札幌市中央区)とバローホールディングス(同・岐阜県恵那市)、リテールパートナーズ(同・山口県防府市)の3社は、2018年12月25日に資本業提携を締結、「新日本スーパーマーケット同盟」という戦略的なプラットフォームを構築した。アークスはこれまで経営統合で事業を拡大してきたが、今回は同じ経営観を持つ2社と提携することで「アークス的拡大手法」を超えた別次元での合従連衡を進める。3社の売上高は1兆円を超える。アークスの横山清社長に今回の資本業務提携に至った経緯をインタビューした。(3回に分けて掲載します)(写真は、アークスの横山清社長)

「これまで食品スーパーは、大と小との戦いやドラッグストア、ホームセンターなど他業態との戦いだった。例えて言えば、平面的に東西や南北、前後や左右というような戦いだったが、現在はネット取引のような言わば天と地を含めた立体的な戦いになってきている。業界の垣根どころか宇宙空間との戦いのような様相だ」

「日本にスーパーマーケットという業態が入ってから60数年経つが、当時設立された日本セルフ・サービス協会には中小企業や大手企業などが加盟していた。同じセオリーで切磋琢磨してきたのに、気が付いたら大手と中小では目指す方向性が全く違ったものになってきている」

「私たちのように、子供のころに戦争を経験した世代は、戦後大人になってから民主主義が一番と言ってきた。しかし、戦後70数年が経ち、民主主義もどうやらおかしくなっている。グローバル化も最近は怪しくなってきた。二つの軸で社会は進んできたが、格差社会がこの10年間くらいで一気に進んでしまった」
 
「格差の一つが地方と都市の差だ。そうした中、一昨年12月にイオンが中期計画を発表し、都市部はもとより地方のマーケットシェアも高めていくことを表明した。地方のマーケットは、比較的競争が緩くて寡占化すればシェアが取れるということをイオンがハッキリと打ち出したわけだ。イオンは、グローバル化、デジタル化など、我々が懸念していることにも的確に対応することを打ち出しており、そうした武装をした上で地方に攻め込むと言っているようなもの」

「地方を主なマーケットにしている我々にとって、これはガリバーと小人の戦いと言っても良い状況になってくる。このままでいけば、寡占化されるのは間違いない。それで良いのかというのが、今回の『新日本スーパーマーケット同盟』と名付けた3社の資本業務提携だ」

「今は、どの業界でも効率主義が唱えられ、1人当たりの生産性をいかに上げるかが経営の要のように言われている。株式を上場している我々もそうだが、そうした効率性が株価に反映、それが経営者の通信簿だとされる。しかし、効率を求めて株価に反映させるためには、儲からない店舗を閉めるような選択で良いのだろうか。また、経営力が弱いスーパーをどんどん買収して一強主義のようになっても良いのだろうか」

「私は、日本で初めて育ったコングロマリットの一つが、はっきりと寡占化の野望を打ち出したと見ている。彼らは野望ではなく、アメリカや中国など外国資本の防波堤になる意味を込めて寡占化が必要だと言うだろう。しかし、それで良いのだろうか」

「アメリカのように規格化、標準化した店づくりが一番だと信奉し、アメリカの大手流通資本が日本に上陸したら日本の流通業は打撃を受けると言われたが、実際には違った結果になっている。我々はそれで安心しているわけではないが、例え生産性が悪くても地方でそこに暮らす人と一緒に生き延びていくためには、規格化や標準化と違うもっと別なやり方があるのではないか。その問題提起を含めて今回の『新日本スーパーマーケット同盟』の誕生に繋がった」

「我々は、地方に根付いたスーパーを統合してそれぞれの独立性を重んじながら連携する『八ヶ岳連峰経営』を進めてきた。野望に燃えて合従連衡を進めてきたわけではなく、地方で生き延びるためにやってきたら今のアークスのような企業体になった。客商売というのは、最も人間臭いもの。年に数回しか食べないような京都の上品な漬物よりも、毎日の食卓にのぼる沢庵漬けの提供にこそ食品スーパーの本質があるのではないか。我々は沢庵漬けのように毎日の生活に欠かせない存在を目指したい」(構成・本サイト、以下次回に続く)


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