アークス(本社・札幌市中央区)は、バローホールディングス(同・岐阜県恵那市)、リテールパートナーズ(同・山口県防府市)と資本業提携を締結、大手流通2強への対抗軸を打ち出した。地方の独立系食品スーパーが手を組んで、地方の衰退に歯止めを掛けるソーシャルビジネスの側面を持つ戦略的提携だ。アークスの横山清社長に今回の資本業務提携の狙いを聞く独占インタビュー2回目を掲載する。(3回に分けて掲載します)(写真は、札幌市中央区にあるアークス本社=右の建物とラルズ本社=左の建物)

「アークスの前身、ラルズは売上高100億円到達に20年かかったが、コツコツとやれば1000億円到達まで単純計算で200年かかることになる。しかし、手を組んだら3年でやれる。ということで、経営がおかしくなる前に手を組もうとしてきたのがアークスだ。その動きが少し早かったから、互いに不信感もなく、ほとんど救済型ではない前向きの統合ができた」

「そのころは、バブル崩壊後の失われた20年と言われながらも流通業界は伸びてきた。我々も、コープさっぽろに負けるなというような拡大目線で経営をしてきた。その中で流通業界の勝ち組だったつもりでいたが、ここにきて『これはちょっと違うぞ』という感覚になってきた」

「普通なら統合によって儲かったら、経営者はそれを懐に入れてベンツに乗ったり海外に行ったり、ハワイに土地を買ったりする。事実、そういう経営者がたくさんいるじゃないですか。だけど結局は、ありきたりなところに住んで、陳腐な服を着ている経営者が生き残っている。それを卑下しているわけではなく、気が付いたらそんな恰好で働いていたということだ」

「ここへきて(IT業界のように)敵ではないと思っていたら敵だったりするような環境になってきた。流通業界のトップを走っている企業だって、ひとつ躓いたらどうなるかわからないという状況であることは、かつてのダイエーや西友を見れば明らかだ」

「最近は、都市部にも買い物難民が出てきているそうだが、本当の意味での買い物難民は地方で顕著になっている。大手流通企業が地方のスーパーを買収して、採算が合わないところは閉め、後はネットで配達するというような生活では本当に消費者のためになるのだろうか」

「杖をついても、車椅子でもスーパーに行って買い物をしたいというニーズは強い。それを実現するためには、地方スーパーである我々が生き残らなければならない。アークスもそのためにどうするかという考えで今までやってきた。しかし、どうも我々の考えているのが時速30㎞だとすれば、この2年間で時速60㎞台になってきたようだ。その速さに合わせた対応、対策が必要になってきた」

「今回の3社提携は、いずれも企業として一定基準をクリアしないと認められない東京証券取引所の1部と2部に上場している流通企業同士が手を結んだ。密度は薄いかもしれないが、東と西と中央というように日本列島縦断の図式ができた。しかも、口約束だけではなく互いに約60億円の投資をする。紙縒り(こより)ではないステンレスチェーンの締結だ」

「全国中小スーパーの共同仕入れ機構であるCGCも、場合によっては取り込んでいくような気持ちで進めたい。1強全弱ではどうしようもないので、全弱にならないためのベースを作りとして旗幟(きし)を鮮明にしたわけだ。我々のような独立系食品スーパーがはっきりと旗印を挙げ、規制もしなければ強要もせず、同じ目的に向かってまっしぐらに進む企業が手を組む。提携発表後には、すぐ首都圏から反応があった」

「私のところには、年末の挨拶に来る問屋やメーカーの関係者がたくさんいるが、お世辞かもしれないが彼らも『1強、2強で抑えられたら困る。今回の提携は歓迎だ』と言っている。PB(プライベートブランド)にしてもNB(ナショナルブランド)のメーカーよりPBがシェアをもったらNBメーカーは身動きできなくなる。そういう面から言っても、消費者、メーカー、問屋などにとっても対立軸があって選択肢が広い方が良いだろう」(構成・本サイト 以下次回に続く)



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