イオン北海道(本社・札幌市白石区)が、昨年9月にダイエーの道内店舗を承継して以降、順調に売り上げを伸ばしている。承継前はダイエー道内事業分で数億円の赤字があったが、今期は1年前倒しでの黒字化が確実だ。また、イオンの既存店もダイエーの良い部分を取り入れて好循環の歯車が回りだしている。3~8月の第2四半期決算を踏まえて、就任3年目に入った星野三郎社長(61)に通期の見通しや店舗戦略についてインタビューした。
【ほしの・さぶろう】1955年3月生まれ、61歳。1988年3月ジャスコ(現イオン)入社。2002年2月秋田事業部長、04年2月北海道事業部長などを経て10年4月執行役員、11年4月取締役。営業担当兼務や執行役員副社長、経営企画・開発担当、専務執行役員の後、14年5月イオン北海道社長就任。IMG_9428(写真は、インタビューに答える星野三郎社長)

 ――中間決算は8%減益でした。どう見ていますか。
 
 星野 昨年9月に道内のダイエー9店舗を承継してシステム投資を行い、今年度の上期には「札幌麻生店」(札幌市北区)、「東札幌店」(同市白石区)を大型活性化するなど投資先行型だった。もともと上期については増収減益予算だったので、ほぼ計画通りの結果だ。上期のイオン北海道の既存店売り上げは前年同期比99・7%、これは長雨と8月の相次ぐ台風の影響が出たためだ。
 
 その中で食品部門とH&BC(ヘルス&ビューティケア)部門は同101.5%だった。過去5年間、この部門では既存店売り上げが前年を割っていない。一方、アパレルとホームファッション、シーズン商品は厳しく推移した。しかし、利益率確保に早めの対応をしたため厳しかったが、(利益率)改善に結びついた。外部環境が良くなかったものの奮闘したのが上期だと見ている。通期の決算は変更なしで間違いなくいけるだろう。
 
 ――消費のトレンドをどう見ていますか。
 
 星野 個人消費については、可処分所得が42万円前後でずっと横ばい。感覚的にアベノミクスで良くなるというマインドはあったが、実態は横ばいだ。その中で、消費の中身は変化している。核家族化が進んで少量だけでも良いものを買ったり、健康に関する食品や商品の伸びが高いなど、トレンドは変わらなくても中身が相当変わっているところを当社はうまく捉えることができている。それが食品、H&BCの伸びに表れた。
 
 ――ダイエー事業の承継はスムーズにいっていますか。
 
 星野 ダイエー承継店舗合計の売上高は、上期で前年同期並みの100・5%、食品部門は102・6%だった。4月、5月は予算を達成していたのだが、6月と8月の天候異変で前期並みになった。下期に入った9月、10月で言えばダイエー承継事業全体で二ケタ増を達成しており、相当良い状況だ。特に活性化した札幌麻生店、東札幌店はお客様の「イオンになって良かった」という声が増えている。
 
 個別に言うと、3月に活性化した札幌麻生店は9月116%、10月115%。6月に活性化した東札幌店も9月117・5%、10月118%で推移している。あらためて承継店舗の駅前立地という潜在マーケットの大きさを実感した。当社の店舗数は、32店舗から40店舗になったが、承継店舗は成長事業になるという手応えを掴んだ。
 今期は、承継後のシステム投資や活性化投資など投資先行型になるが、ほぼ黒字化できる。計画では黒字化するのは来期(2018年2月期)の予想だったが、前倒しで黒字転換できる。来期以降は本格的に利益に貢献してくるだろう。そういう意味では順調に承継できたと考えている。

 ――イオン既存店とダイエー承継店舗が持つ売場の強みを相互に移転したそうですね。
 
 星野 ダイエー店舗の良い面を残すことを丁寧に実施した。衣料分野の婦人肌着ではダイエーのやり方をイオン既存店に盛り込んだことで成果が上がっている。婦人肌着は、「札幌発寒店」(札幌市西区)や「札幌桑園店」(同市中央区)と比べてダイエー承継店舗の「新さっぽろ店」(同市厚別区)が一番売れている。札幌発寒店や札幌桑園店の3倍くらいの額だ。その売れ筋をイオン既存店に拡大したことで婦人肌着は今、絶好調だ。ダイエーの強みだった化粧品やデリカ(惣菜)部門を残すとともに、イオン既存店にも盛り込むようにした。
 
 合併や承継というのは、双方の従業員の信頼関係が大事だ。承継したダイエーの平均店舗年齢は31年で重みがあるので、そこは尊重して対応したのが一番良かったと思っている。元ダイエーの従業員はいきいきと頑張っている。結局、小売業は人。承継したダイエー事業が計画以上に進んでいるのは全体として大きなプラス要因だ。

 ――店舗の活性化投資の詳細は。

 星野 上期は10億円程度を投資したが、大きいのは前述した札幌麻生店と東札幌店で、小幅リニューアルは「札幌栄町店」(札幌市東区)、「上磯店」(北斗市)、「湯川店」(函館市)で実施した。下期は6億円程度を投資するが大きいのはダイエー承継店舗の新さっぽろ店の活性化。同店は14年春に食品売場を中心にリニューアルしたが、今度は全フロアで行う。
 札幌副都心開発公社のサンピアザ専門店街やデュオ1、デュオ2、それにイオンモールのカテプリも同時にリニューアルする。あそこのSC来館者は年間1000万人で、当社の札幌発寒SCの1150万人に次ぐ規模。17年で開業40周年を迎える新さっぽろSCが現在も1000万人という大台の集客力があるのは魅力的だ。
 

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