商圏人口900人の村でコンビニエンスストアは成り立つか――北海道のコンビニチェーン、セイコーマート(本社・札幌市中央区)の丸谷智保社長は、17日に札幌市内のホテルで開催した政策説明会で、昨年12月に出店した、留萌管内初山別村の直営店舗を紹介した。人口減少と高齢化が進む地域で、いかに収益モデルを構築するか、初山別村への出店には、セイコーマートの未来戦略のエッセンスが詰め込まれている。IMG_6715(写真は、政策説明会で話す丸谷智保社長)

 出店を決めたのは、初山別村の宮本憲幸村長が何度もセコマ本社を訪ね、出店の要請を重ねたのが契機になった。人口1300人の村にはスーパーどころかコンビニもない。集落は3つに分かれ、南の集落に住む約400人は羽幌町に近いため、その町内にある食品スーパーやコンビニで買い物をするパターン。しかし、村役場のある北の集落に住む約900人は、まさに買い物難民そのものだった。
 
 セコマが相次ぐ出店要請に応えることにしたのは、同村からさらに北の遠別町、天塩町、幌延町への配送ルート途上にあって物流ルートを新たに構築しなくても済むことや、狭小商圏に対応した食のインフラ機能を構築するモデルケースにできると判断したためだ。
 
 出店を決定して準備に取りかかったが、最も困ったのがパート従業員の募集だった。当初集まったのは2人。最低でも10数人が必要なのに、これでは店が回っていかない。村長に相談すると、募集チラシを全戸に配る広報誌に挟みこんでくれ、何とか人手を確保することができた。
 
 村は国道沿いの村有地約300坪を年間3万円で貸すことを決め、ランニングコスト低減に協力、昨年12月19日にオープンに漕ぎつけた。丸谷社長は、「客単価は普通のコンビニよりも高い1000円で1日(6時~24時の営業時間)300人の客数がある。日販30万円なら何とかなると考えていたが32~3万円で推移しており、償却が進めばクロになるが、私は収支トントンでも良いと思っている」と話し、既に村のライフラインとして村民から感謝されていることを紹介した。
 
 村役場の2階にある村長室からは、セコマ店舗が見える。宮本村長は、店舗を眺めるのが日課になったという。セコマがオープンするまで通りを歩く人の姿はほとんどなかったが、最近は歩く人が増えてきた。「その光景を見ると本当に感激します」と宮本村長は村に活気が出てきたことに手応えを感じているそうだ。さらにセコマ出店とは直接的な関係はないにしても、人口が4~6月で10人増え、15年ぶりに同村の人口が二桁増になった。「店が一つのきっかけになって地域が活性化していくとすれば、小売業に携わるものとして仕事冥利に尽きる」(丸谷社長)
 
 人口減少、高齢化によって道内は、都市部と地方の小売り環境の格差がますます拡大する傾向にある。商圏人口が少ない狭小マーケットの小型店で、いかに買い物客を満足させる商品供給と品揃えをしていくか、その販促手法を構築していくうえで、セコマ初山別の出店は大きな意味を持っている。


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