北海道信用組合協会林伸幸会長(北央信用組合理事長)インタビュー

金融

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 ――企業の倒産が少なくなっていますが、一方で統計に出てこない廃業は増えていますね。実際のところ信組業界の融資先には廃業を選択する事業主も多いのでは…。
 
 林 事業承継の時期になっても後継者がいないところに向けてM&A(企業の買収・合併)などに取り組んでいます。ただ、M&Aは信組業界ではなかなか縁がなかった領域。北央信組で具体的に成就した案件はまだありませんが、『事業を継続するのは年齢的に限界なので事業とお客と従業員を引き受けてくれる企業を探してくれないか』という依頼はいくつかあります。
 
 ――創業支援で起業を後押ししていくことも大切です。
 
 林 起業率を高めることは今後大事になります。北央信組では、創業支援と言っても相談があれば実施していた程度です。簡単ではないですが、もう少し創業融資に踏み込みたい。それでも年間20件くらいの創業融資があってこの数年で60~70件くらいになっています。しかし、一般的に言えばその半分が3年以内に躓きます。継続支援していないから続いていかないのかもしれませんが、その理由についてまだ十分なリサーチができていません。事業計画自体に問題があるのかも知れませんから今後詰めていきたい。
 
 ――事業計画作りにもコミットしていくことが必要ですね。
 
 林 それは商工会議所などいろんなところで実施しています。私たちが大事だと思っているのは次のようなことです。例えばラーメン屋さんに勤めていた方が独立したいと資金支援を求めてきた場合、事業計画があっても味やお客の見込みなどについて私たちでは評価が難しい。最後は、何で評価するかと言ったら、いろいろな話をしながら、『この人ならきちんとした考え方を持っている』と人を判断することに尽きるのです。事業性評価といっても結局は人物評価。事業計画を見てもある特定の業種ならジャッジできるかもしれませんが、建設業の管工事、基礎型枠工事、屋根工事、左官業などすべてにジャッジできる力量はありません。だから長いお付き合いの中で、『この社長はきちんとした考え方をもっている』とか、『職人を大事にしている』、『元請けとの信頼関係を築いている』などで評価するということなのです。
 
 ――まさに人への融資ですね。
 
 林 中堅・大企業なら知的財産権などいろいろ評価対象があるでしょうけれども、信組業界の取引先は小規模零細、家族経営のところですから何をもって判断するかは人しかありません。北央信組では200先くらいから経営改善計画書の提出を受けていますが、元々半分くらいの先には事業計画そのものがなかったほど。『昨年より売り上げが良いね』、『悪いね』という感覚で事業を行っているところがほとんど。そういう中でも、突出して売り上げが伸びて良くなる方がいます。商売の勘所を掴んだ方はやはりすごいと感じます。
 
 ――道内信金では18年に預金量1兆円の金庫が誕生しますが、道内信組の再編についてはどう考えますか。
 
 林 (再編は)私の代ではないのではないか。将来の人口ビジョンなどを見ると業種を問わずマーケットは縮小していきますが、そうなる前に対処をしていかなければならない。ただ、信組の相互扶助は、もたれあいの助け合いではありません。あくまで自立共助です。自立共助を前提にものごとを考えないといけない。再編の話が持ち上がってきてもプラス同士で一緒になれるものがなければ難しいのではないでしょうか。(終わり)

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