道銀笹原頭取インタビュー、「優先株537億円返済の道筋つける」

金融

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 ――道内景気の現状をどう見ていますか。
 
 笹原 感覚的にはマイナスではない。活況な観光分野などがありますが、平均すると現状維持よりは少し上向いているのではないか。もっとも、目に見えるように景気が良くなっているとは全く感じない。医療介護、食と観光の資金需要が、もう出てきても良いのではと期待しています。
 
 ――農商工連携の6次化を進める「道銀アグリビジネスファンド」の出資状況は。
 
 笹原 13年4月に当行と道ベンチャーキャピタル、農林漁業成長産業化支援機構と設立しましたが、14年11月にはみずほ銀行も参画して総額30億円、投資期間10年で運用しています。これまでに北海道そば製粉(苫小牧市)に1億円、平川ワイナリーに5000万円をそれぞれ出資しました。私たちは農家の方々に直接アプローチするには苦労があって出資先を発掘するのも難しい。そこで6次化をテーマにアウトプット、つまり出口から生産者に遡上していく取り組みを強めていく考えです。
 つまり、「良い食材があるからどう売っていくか」ではなく、出口のニーズから遡って生産者にアプローチ、6次化のお手伝いをするという流れです。販路が確保できていれば安心して作れ、付加価値を付けることも可能。そういうアプローチを重点的にやっていきたい。
 
  537億円優先株は在任中に道筋
 
 ――ロシアビジネスの展開についてはどうですか。
 
 笹原 ユジノサハリンスクとウラジオストクの2ヵ所に駐在員事務所を置いていますが、サハリンは行くたびに変化している。ビル建設のクレーンの数は札幌よりも多い。生活の質も向上しており、現地企業の体力もついてきたと感じます。「資金はあるので日本、北海道の企業と組みたい」と以前と比べ現地企業もかなり財務状況が良くなってきたので、当行としても組みやすくなっています。
 具体的に動き出しているものがいくつかあって建設とサービス業は年度内には明らかにできます。農業分野では植物工場などの施設の案件もあります。ウラジオストクでもいくつかの案件が動き出しています。
 
 ――ところで、ロシア・アムール州での農業協力はどうなっていますか。
 
 笹原 現地で農産物を試作して技術の確認はできましたが、採算ベースに乗せるのは現状では難しいためペンディングになっています。北海道に農産物を輸出するには輸送インフラが整っておらずコスト高になる。現地で販売するにしても流通過程での課題が解決されていない。そういったことが解決するにはもう少し時間が必要です。
 一方、ハバロフスクでは日揮と一緒に植物工場を現地企業と建設中で、来年早々にキュウリやトマトを現地市場に流します。北海道向けにも販売していけます。
 
 ――2000年に受け入れた450億円の公的資金は、ほくほくフィナンシャルグループで09年に完済しましたが、その前年に取引先などに持ってもらった優先株537億円分がありますね。
 
 笹原 優先株は3%の配当がありますが、その配当が経営的に負担になっていることはありません。537億円は自己資本に算入されており預かりものですが、有効に活用させていただいている。
 
 ――返済については。
 
 笹原 現在、そういう声はないので、皆さん安心してお持ちいただいているのではないか。発行から16年経ちましたが、償還期日は特に取り決めはありません。そうは言っても、(苦しい時に)助けていただいた資本なので、いつまでもお預かりしておくのも申し訳ない。お返しできる体力がしっかり蓄えられた時点でお返ししたい。私の頭取としての宿題として捉えてもらって良い。在任中に私がちゃんと道筋をつけます。
 
 ――頭取は、札幌証券取引所の理事も務めていますが、札証に期待することは。
 
 笹原 札証は非常に積極的に活動して道内企業の上場機運を盛り上げていますし、札幌に証券取引所があることは財産だと思っています。ああいうきめ細かい動きは、どこもできません。今後も起業家精神を盛り立てて株式公開企業が増えていくことが道経済に大切なことだと思う。
 
 ――信金では札幌・北海・小樽が合併して2年後には1兆円信金が誕生します。後に続く信金があると思いますか。
 
 笹原 合併は今後も続くと思います。おそらく地域単位で進んでいくのでしょう。我々地銀では、システム投資が巨額になるので飛び地は有効ですが、信金での飛び地合併はあまりメリットがないのではないか。
 
 ――全国で進む地銀再編は道内に波及しますか。
 
 笹原 人口減少や少子高齢化によって地銀再編は全国レベルではまだ続くでしょう。しかし、道内ではないと思う。既にひと足先に進みましたからね。
 
 ――ところでトマムが中国資本になりました。道内リゾートでは外国資本がどんどん入ってきていますがどう捉えていますか。
 
 笹原 どこの資本かは関係がなく、むしろ北海道に投資を呼び込むことが大事。本来は、北海道の企業が投資をするのがベストですが、それだけでは投下資本が少ないのであれば本州企業であれ海外企業であれ、より厚い資本をもったところに投資してもらうのは非常に大事なこと。外から資本を呼び込めない地域では発展が限られてしまいます、北海道はもっとグローバル化すべきと考えます。
 海外の資本がホテルやリゾートを道内に所有するのは送客力があるからです。欧米系の有力ホテルもニセコに相次いでホテルを作るようですが、欧米のブランドによって欧米人も呼び込める。一連の動きは道内の活性化に必ず繋がるでしょう。(終わり)

 

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