北海道銀行頭取に就任してから約半年、笹原晶博氏(58)が安定感のあるスタートを切った。12年間頭取を務めた堰八義博会長(60)と同期入行で5年前から代表権のある副頭取として堰八道銀体制を支えてきた。それ以前も営業企画、営業推進の担当役員を6年間務めるなど文字通り“堰八イズム”の体現者でもあった。道銀発足から7代目となる笹原頭取はどう“笹原体制”を構築するのか――地方創生への取り組み、ロシアビジネス、537億円優先株へのスタンスなどを聞いた。IMG_9752(写真は、インタビューに答える笹原晶博頭取)

  道内21信金・信組と「地方創生ファンド」でタッグ

 ――6月末の頭取就任から約半年が経過しました。半年の実績を踏まえてあらためて抱負を聞かせてください。
 
 笹原 頭取を拝命しておよそ半年が過ぎましたが、『やり遂げなければいけない』という使命感が日増しに高まっています。頭取と副頭取では責任が徹底的に違いますから、そこは大きな使命感をもって進むだけですね。
 
 ――就任から「地方創生の推進」を大きな柱にしています。
 
 笹原 政府が地方創生元年と位置づける前から副頭取時代を含めて道内を隈なく回ってきたので、急激に進む人口減少や高齢化によって地域の経済力がそがれていくのを目の当たりにしてきました。それにどう対抗して各地域を盛り立てていくかは常に考えてきました。地元にいる方々は、ある意味でゆっくりとジワジワと環境変化が進んでいるのでなかなか切迫感がなかったかもしれませんが、私どものように間隔を置いて地方にお邪魔すると急速な変化に危機感を抱きます。
 その地域に私どもの店もありますから、人口減少や経済の地盤沈下に地域と一緒になってどう戦っていくか――これが最大のテーマだと思っています。当行ができることを全力でやると全支店長、全職員に号令をかけ、日々の業務に課しています。
 
 ――行内に「道銀地方創生本部」を設置して推進体制も強化しました。
 
 笹原 道銀地方創生本部は、山川広行副頭取を本部長に、副本部長を営業部門長として企画部門長や道内8地域の地区担当役員も加わって構成されており、自治体や地域企業との接点を今まで以上に強化、各地域の地方版総合戦略の策定・事業推進を支援する体制になっています。これまでも「地域のお役にたつ」ということを経営理念としてきましたが、そのスピードと実効性を上げて行かなければいけない。当行の持っているネットワークや知見、サービスを全力で注ぎ込んでいきます。
 
 ――地方創生には地域金融機関同士の連携も欠かせません。
 
 笹原 パイが増える段階ではお互いに競争していけましたが、パイが縮む中で競争ばかりしていては地域が沈んでします。ビジネスベースでは競合するところがあっても、地域の可能性を拓く事業であれば金融機関がお互いに協力することが大切。金融機関同士で切磋琢磨するシーンと一緒に支えていくメリハリが今まで以上に問われている。当行だけでなく地域を支える信用金庫、信用組合、様々な機関と連携しながら一緒にできることは一緒にスピードを上げてやっていく考えです。
 
 ――北洋銀行と協力するシーンも出てきますか。
 
 笹原 案件によっては出てくると思います。一緒になって地域を盛り立てる場面がこれから増えていかなければいけない。今までもない訳ではなかったのですが少なかった。リスクをシェアしていくのも大事な考え方ですから、皆さんと一緒にやっていく。
 
 ――9月には「地方創生ファンド」を設立しましたが、その狙いと具体的動きは如何ですか。
 
 笹原 地方創生ファンドを設立するに当たり北海道ベンチャーキャピタルと信金、信組にも声を掛けて全道30信金・信組のうち21信金・信組に賛同してもらい出資を受けました。出資総額は8億1000万円、投資期間10年で動いています。地域の可能性を一緒に発掘・育成するのが目的で、当行だけでなく信金や信組にも案件を持ち込んでいただきます。
 持ち込まれた案件は、各信金信組と当行・道ベンチャーキャピタルで構成された検討会議に諮って投資を決定します。この検討会議によってお互いに目利き力を高めることもできる。9月末にファンドの第1号案件として、北海道大学発ベンチャーの医化学創薬に5000万円を出資しました。現在はその1件だけですが、各地で地方版の総合戦略が作られているので、そういう中から次の案件が出てくるでしょう。
 
  9月中間最高益でも厳しい環境

 ――9月中間決算は、半期としては過去最高の純利益を計上しましたね。
 
 笹原 金利低下の基調は継続しており銀行にとって非常に厳しい状況が続いていることに変わりはない。金融機関は貸出が(稼ぐ力の)ベースですが、道内では新規の貸出需要がまだまだ活発化していない。どこの金融機関も貸出を伸ばしたいため金利競争がずっと続いている状況です。
 過去にある程度の金利でお貸ししていた資金が返済されると、今度お貸しする際には以前に比べてずっと低い金利になる。つまり今の金利が続いている限り、金融機関の貸出金利収入はずっと下がり続けます。

 ――中間決算の最高益も喜べない…。
 
 笹原 手放しでは喜べません。貸出金利の減少をカバーすべく努力した結果は評価できても、基調は変わっていないので貸出利息の減少が止められた時が良くできたということになるのではないでしょうか。ただ金利はしばらく上がる要素はない。金利競争に紛れて同じことをやっていたのでは取引先の評価は得られないでしょう。
 取引先に付加価値のある提案をしてそれを採用してもらった時に初めて他行と競争した以上の金利を得ることができる。提案の質をあげていかなければなりません。そのためには、取引先のことを良く知るということが大切。そこから初めてオーダーメードの提案ができる。ここを端折ってモノ売りに終わってはいけない。
 

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