キリンビール北海道千歳工場、ビール製造工程にグリーン水素使用の実証事業開始

経済総合

 キリンビール北海道千歳工場(千歳市上長都949-1)は、2026年7月6日、ビール製造工程の一部にグリーン水素(再生可能エネルギーで発生させた水素)を利用する実証事業の開所式を行った。グリーン水素が既存の都市ガスと代替可能かどうかや安定性、安全性を含めた検証を10年間かけて行う。キリングループが掲げる2050年温暖化ガス排出量実質ゼロに向けた取り組みの一環とする。ビール工場が、製造工程でグリーン水素を使うのは、実証レベルでも初めて。(写真は、水素製造設備の起動式。左から三菱商事エナジーソリューションズ・藤井隆男社長、千歳市・横田隆一市長、キリンビール北海道千歳工場・宮﨑知宏工場長、合同会社MTグリーンエネルギー・杉本直樹職務執行者)

 キリンビール(本社・東京都中野区)・三菱商事(同・同都千代田区)・三菱商事エナジーソリューションズ(同・同)が出資・運営するMCKBエネルギーサービス(同・同)と、高砂熱学工業(同・東京都新宿区)、三浦工業(同・同都港区)が、キリンビール北海道千歳工場の敷地内に実証事業用の水素製造設備を設けた。

 同設備は、太陽光発電設備(両面発電パネル448枚、設置角度30度)と高砂熱学の水電解装置、水素貯蔵タンクなどからなり、工場に隣接して三浦工業の水素ボイラを設置した。水素貯蔵タンクとボイラの間は、地下埋設した配管で結んでいる。上水(水道水)を電気分解して水素を発生させる水電解装置は、固体高分子型。1時間当たり100N(ノルマル)㎥(1気圧で100㎥のこと)の水素を発生できる装置を2台設置した。使用する電力は、隣接する太陽光発電設備で発生する電力と系統の非化石証書付きの電力を使う。太陽光発電と系統の電力使用比率は1対2。

(写真は、キリンビール北海道千歳工場の敷地内に設置された水素製造設備)

 発生した水素を貯蔵タンクに貯め、使用時に配管を通じて水素ボイラ1台に供給、酸素と反応させて蒸気を発生させる。発生した蒸気は、ホップなどを添加して麦汁を煮沸する加温工程で利用する。また、糖化工程での加熱用にも使う。ビール製造工程以外では、タンク洗浄用に使う洗浄剤の加熱に使う。蒸気の供給系統は、グリーン水素熱源と都市ガス熱源の2系統とした。工場で使用する熱需要のうち、年間で最大約23%をグリーン水素に転換し、年間約464tの温室効果ガス排出量削減を見込む。

 実証実験が10年間に及ぶことについて、「ボイラから供給する水素由来の蒸気が、負荷変動にどれだけ追従できるかなど、ビール工場の熱需要に応じた最適な運転ノウハウのほか、経済性、CO2削減効果を総合的に検証するため、この期間が必要」と水素製造設備の運転管理を行う合同会社MTグリーンエネルギー(三菱商事と高砂熱学が出資)の担当者は話した。

 キリンビール北海道千歳工場の宮﨑知宏工場長は、「2025年の温暖化ガス排出量実質ゼロのためには、省エネ、再エネ、エネルギー転換の3つがあるが、エネルギー転換の一つとして、水素ガス実証事業を10年間かけて評価していきたい。現状は都市ガス利用よりも割高になるが、経済性、安全性も検討したい」と語った。水素製造装置の導入費用を含めた10年間の実証事業の予算は非公表。補助金は使っていない。水素製造装置の外観やフェンスには、近隣の小学校児童に描いてもらった「未来の千歳市」「グリーンエネルギー」「地球環境」をテーマしたイラスト53枚が、ペイントされている。

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