北海道から世界に通じる経営者を育成しようと産官共同で取り組んでいる「北海道経営未来塾」(塾長・長内順一未来経営研究所社長)の第5回講義が5日、札幌市中央区の札幌パークホテル1階テラスルームで開かれた。講師は、ニトリホールディングス(HD、札幌本社・札幌市北区、東京本社・東京都北区)の似鳥昭雄会長兼CEO(76)。5期生37人を前に『ニトリの働き方』をテーマに約90分間講演した。(写真は、北海道経営未来塾で講演する似鳥昭雄・ニトリHD会長兼CEO)
似鳥氏は、経営には「人のため、世のため」という考えが大切だと述べ、「売り上げとか儲けるという考えでは所詮長続きしない。最初に『お客さまにとって』という言葉が出てこないといけない。未だに当社の社員でも過去の経験や世界一流の企業がやっているからという言葉が出てくる。お客の立場で寝ても覚めても考え続けることが何によりも大切」とした上で、「僕の師匠はチェーンストア理論の実践教育を推進したペガサスクラブ主宰の渥美俊一先生。先生は、『なぜを7回繰り返して突き詰めろ』とよく言っていた。渥美先生はうちの親爺より10倍怖かった。蹴とばしたり、鉄拳が飛んだり、メモしないやつは出て行けなど躾が厳しかった。自己流はダメ。きちっとしごいてくれる師匠を見つけた方がいい」と話した。
さらに、先を見ることについても言及。「10年先を見てピタッと一致するのが良い経営者。10年先も言えない経営者は経営者じゃない。僕は30年先を言ってきた。確かにどうなるか分からなかったけれど、不可能な数字を並べるだけでも、それが頭に入ってきて、どうすれば良いかを無意識に考えるようになる。未来から逆算する癖がついてくる。現在から未来を考えると過去の経験からしか物事を考えない。ものの見方、考え方を変えれば誰でも成功できる」と訴えた。
また、塾生たちの中に2代目が多いことを念頭に、「経営には100倍の発想を持った方がいい。今の延長を考えただけでは10年経っても2割か3割しか伸びない、そんなことだけに人生費やしていいのか。そんなつまらない人生でいいのか。2代目なら少なくとも親の代の10倍の規模にしなければいけない」と発破を掛けた。
ホームセンター島忠(本社・さいたま市中央区)のTOBについて話すひと幕もあった。「即断、即決、速攻が大切で、迷ったら実行しなければならない。半分以上失敗する確率でも実行して仮に失敗しても別の道が見つかる。実行しないで後悔するよりも、実行して失敗する方がいい。今回の島忠さんの件もメディアに突然、『島忠TOB』が出て、瞬間にチャンスだと思った。一度我々は3年前に(提携)を打診した時に断られた経緯がある。何であっち(DCMホールディングス)を受け入れて、うちがダメなのか。確かにホームセンター同士の方が一緒になりやすい。当社と島忠は、営業地域が互いに関東で神奈川や東京、埼玉ではかち合ったりする。それよりも名古屋や大阪、北海道などバッティングしないDCMの方がやりやすいのだろう。でもチャンスだと一瞬で思った。(DCMHD)がTOBなら当社もそれでやろうと。期限は1ヵ月以内と決まっているから早く決断しないといけなかった」と述べた。
「タイミングが大事で考え過ぎてはいけない。ただ、事前によく調査もしないで判断したら失敗することになる」と締め括った。