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北大生活協同組合との関わりも深かった。吉見さんが大学事業連合北海道地区理事長や全国の大学生協事業連合副理事長だった頃に付き合いのある須田正樹・大学生協事業連合北海道地区常務理事は、「月1回の会議で顔を合わせたり、相談があれば会ったりするくらいで、それほど親しい付き合いではありませんでした。お酒を一緒に飲むのは、年に1~2回でしたが、覚えているのは、ある年の忘年会のこと。吉見さんが、『もう一軒行くぞ』となったのですが、その日は大雪で、JRが止まりそうだった。それでも、みんなで付き合うことになったが、お開きになってJRで帰った仲間は、やはり列車が途中で止まってしまい大変な目にあったそうです。興が乗ったら楽しくなる吉見さんの人間臭い一面を見たような気がしました」
ワイン好きで、北大近くには行きつけのワインバーがあり、北大生協の役員たちも一緒にそこに繰り出したことがあったという。ススキノのワインバーで一緒に飲んだ役員もいた。前出の須田さんは、「吉見さんは、にやっと笑ってズバッと言うことが多かった。しかめっ面で怒るのではなく、にやっと笑ってから怒るから、ニヤッとする時は緊張しました」と話す。
同連合北海道地区の嶋崎聡業務副統括は、「90年代に大学生協の会計基準を作った時も、吉見先生がメンバーでした。北大生協監事の時には、会計論の話は一切せず、生協とはこうあるべきだという話が多かったと記憶しています。最近では、コロナ禍の資金繰りは大丈夫かとアドバイスをもらったりしていました」と語る。
北大生協の小助川誠専務理事は、「私が専務理事になって最初の頃、『君は理事会で何を決めたいのか』と怒られたことがあります。また、『資料が多すぎる』とか、理事会運営についていつもサポートしてくれました。私が夜8時、9時になって帰ろうと北大正門まで歩いていくと、事務棟2階の副学長室の明かりがいつも点いていた。いつもこんな時間まで仕事をされていることに頭が下がりました」と懐かしむ。
吉見さんは、長くHBCの『今日ドキッ!』でコメンテーターも務めた。現在、『今日ドキッ!』のメインMCを務めている堀啓知さんは、「2014年12月、衆院選特番の前日の打ち合わせで、先生は鞄の中から次々と各候補の資料とメモを取り出しました。アベノミクス継続の是非を問う選挙、経済の知見での解説を期待していましたが、政治の分野でも周到に準備する姿に先生の真骨頂を見ました。番組ではどんな話題でも興味を持って向き合い、硬派なニュースもかみ砕いて優しくコメントしてくれました。北大のジンパ、市電を貸し切った宴会、どの場面を振り返っても、先生の笑顔が蘇ります」と話した。
教授室には、いつも緑色のホークスユニフォームが掛けられてた。来道33年、北海道にすっかり溶け込んだ吉見さんだったが、野球だけはファイターズに向かわなかった。九州出身のアイデンティティをホークスに託していたのかもしれない。