【ワンテーマインタビュー】「釧路湿原メガソーラー規制条例」、鶴間秀典・釧路市長

社会・文化

 釧路市が、太陽光発電施設の規制を目的とした条例を2025年10月1日に施行した。2026年1月以降に着工する太陽光発電施設は、希少野生生物の保護が前提となり、釧路湿原周辺で規制の網がかかり、貴重な自然が守られるようになる。全国の注目を集めた、「釧路湿原メガソーラー」に待ったをかけた釧路市の鶴間秀典市長(51)にインタビューした。〈つるま・ひでのり〉…1974年6月5日生まれ。1997年3月北海道大学経済学部卒業。2003年4月阿寒町議会議員初当選、2005年10月合併により釧路市議会議員。2007年4月二選、2011年4月三選、2015年4月四選。2019年8月ゲストハウス CRANE鶴代表。2023年4月北海道議会議員初当選、2024年10月釧路市長初当選(同年11月2日就任)。

 ーー2025年6月の「ノーモア メガソーラー宣言」から、同年10月の「太陽光規制条例」(自然と太陽光発電施設の調和に関する条例)という流れになりましたが、市長の太陽光発電施設に関する考えは。

 鶴間 市民が問題意識を持ち始めたのは、ほんの数年前からだと思います。市街地へのソーラーパネル設置は、あまり気にならなかったのですが、国道沿いや釧路湿原周辺など、私たちが守ってきた場所や貴重な野生生物の棲むエリアに入ってきたため、市民の反対の声が強くなってきました。私は、以前から、自然のある風景の方が釧路市にとっては良いと思っていました。そういった意味では、何とかしたいという思いが強くなっていたのは事実です。

 太陽光発電施設の設置には、前市長が、令和5年度に策定したガイドラインがありました。ガイドラインでは、どうしてもお願いベースになってしまうので、抑制するのが難しい状況になっていました。一定の効果がある条例をつくりたいと思って、庁内で話し合って進めてきました。「ノーモア メガソーラー宣言」は、松橋尚文議員から質問が出たことを受け、福島市に次いで全国で2番目の宣言を行いました。

 ーー宣言に対する反響はいかがでしたか。

 鶴間 「ノーモア メガソーラー宣言」では、大変多くの問い合わせをいただきました。「応援しています、賛同します」という方や中には、「国立公園の中にパネルが埋め尽くされているような釧路にはもう行かない」というものもありました。また、「市役所と事業者に癒着あるのではないか」など、SNSやYouTubeにこの話題が結構上がっていた時期には、そうした反応も含まれていました。そういった声は、1000件以上寄せられ、反響は、非常に大きいものがあったと思っています。

 ーーそうした声が、条例制定の後押しになった。

 鶴間 条例は、6月に市議会に素案を提案しました。ただ、制度設計に相当時間が掛かりました。担当部署は、有識者や専門家の意見も聞きながら進めてきました。宣言よりもずっと前から条例制定に向けた動きを始めていました。市民からの声が非常に強いものがあったと感じており、条例は、市民と一緒につくったという感覚を、私自身は持っています。

 ーー条例の特徴は何ですか。

 鶴間 全国的にも珍しい最先端を走るような条例になっています。許可制を取り入れたということと、廃棄の際の積み立て、損害賠償保険も組み入れました。それに加えて、希少野生生物を特定保全種の5種として、専門家に調査をしてもらい、その意見を聞いて判断していくことにしています。地域に棲むタンチョウやキタサンショウウオ、オジロワシといった希少野生生物の保護を主軸にしてつくっているのは非常に珍しく、なかなか類を見ないのではないかと思っています。

 ーー市長は、条例の効果をどう見ていますか。

 鶴間 条例によって、自然と調和しないメガソーラーが抑制されることを願っています。私たちは、湿原に近いところなどには、本当につくってほしくない。希少野生生物が棲むところは、抑制できるようにする効果を期待しています。10kw以上は、市街化区域も含めて市の行政区域全部が許可制です。

 ーーこれ以上はつくらせないとまでは言えない。

 鶴間 希少野生生物がいないところもありますので、そういったところは申請していただき、手続きに則って許可する流れになります。

 ーー事業者は、今まで以上に地域との共生を第一に考えていかなければならない。

 鶴間 私たちは、守りたいところを守るという発想で動いていきます。

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