旭川信用金庫の新理事長に就任した原田直彦氏(54)は、来年度の100周年に向けた様々な施策を検討中だ。中でも新しい顧客管理の体制構築に力を注ぐという。また、100周年を節目に原点を見つめ、新たな100年に向けて一歩を踏み出していく姿勢を強調した。原田理事長に迫るインタビュー2回目を掲載する。(写真は原田直彦理事長)
――旭川に進出している6信金と合同で食のマッチングを企図した“駅マルシェ”を開催するなど連携・連帯に前向きですね。
原田 食の分野以外でもものづくり支援で北洋銀行が開催しているテクノフェアにも当金庫の取引先数社が出展している。お客様にとって結果が出るかどうかが大切なので、他の金融機関との連携や力を借りることが必要だ。例えば、海外進出支援についても当金庫がすぐに現地に事務所が作れるかといったらそんなことにはならない。道銀や北洋銀と連携してお互いに分担できるところは分担してやっていきたいし、そういう流れを作りたいと思っている。
――新理事長として手掛けたい最優先項目は何でしょうか。
原田 画期的というものではないが、テリトリー管理という顧客管理の手法を導入したい。当金庫設立以降100年近く経つとどうしても支店が増えてお客様にとっても当然最寄りの支店が次々に変わっていく。例えば工場進出で郊外の工業団地に移転してしまうことも含めて中心部の支店のお客様が遠くに点在することも多く出てくるようになった。お客様は「あそこの支店と80年取引している」ということが重要でプライドを持っている方もいるから、簡単に「最寄りの支店に移って欲しい」という話にはならない。要は、そういうお客様にとっても(融資など)対応が早くてプライドを損なわないような顧客管理体制を再構築する必要があるということ。
今までは顧客管理を支店単位でやっていたが、今度は全店を旭川信金のお客様として、後は地区割りにして対応できる方法を考えたい。母店機能を持つ店舗とその衛星的な子店という体制は既に導入しているが、それをさらに踏み込むようにしたい。来年度の100周年に併せて徐々に具体化していきたい。
――お話しの出た100周年ですが、どんな催しや記念事業を考えていますか。
原田 4月が100周年だが記念の年度としては1年間継続する。記念預金、記念融資などのほか女子制服も一新する。基本的にはお客様と当金庫OB、職員とその家族に感謝をする年にしようというのがテーマ。そこからまた新たな100年のスタートを切ろうと。格好よく言うと“百”という漢字は“一”と“白”からできているから白紙に戻って一から始めようと言うことだ。
――100周年記念預金はどの程度の規模を考えていますか。
原田 利率の良い預金を少数のお客様だけにということにはならないので500億円とかそういう単位になると思う。もっとも既存にお預けいただいているお客様の預け替えも当然予想されるから、真水の預金という意味ではその半分くらいになるのでは…。
現在の預金量は約7650億円で今年から始まった3ヵ年計画では2%くらいずつ増やす目標。100周年の記念預金運動も展開するので少し伸び率は増え今期末には8000億円を超える可能性もある。ただ、預金だけを一生懸命集める状況にはならない。
――ところで、今年3月末の中小企業金融円滑化法の終了で倒産は増えている訳ではなくてむしろ減っている状況ですが…。
原田 そうだ、減っているくらいだ。当面は増えることはないのではないか。ただ、条件緩和や条件変更して元金をゼロにして利息だけにしている融資先もある。そういう先の改善計画が3年目4年目に入ってもプラス目標なのにマイナスが続いている場合は継続していくかどうかは微妙だ。経営が改善する可能性があるというところは継続するが、そうでないところの見極めが一部出てくるのではないか。
金融庁は条件緩和先に対するニューマネーの融資を積極的にやるように促しているが、簡単ではない。元金を3年も4年も払っていないところにニューマネーを入れてどうやって返すのか。事業が好転する時の増加運転資金が必要なのは理解できる。キャッシュフロー目いっぱい利息に払っていたとすると資金がないのも事実なので、計画の現実性が高いと判断したときは当然応援する。もっとも保証協会は返済していない先にニューマネーの保証はできないというスタンス。保証協会もいずれこうしたか貸し先にも保証をすることになるのではないか。