大泉潤・函館市長インタビュー「新幹線函館乗り入れは人口減対策の幹」「ふるさと納税100億円目標」

政治全般

 函館市長に大泉潤氏(58)が誕生して1年半、精力的に市政執行に向き合っている。「日々新しいこととの出合い」という大泉市長だが、残り2年半の任期を見通して、「在任4年間で市長ポストに慣れることは、おそらくないだろう」と謙虚に話す。大泉市長に就任1年半の実績などについてインタビューした。〈おおいずみ・じゅん〉…1966年3月、江別市生まれ、58歳。早稲田大学法学部卒、函館市役所入庁。2017年4月観光部部長、2019年5月保健福祉部部長、2022年7月市退職、2023年4月市長就任、好きなアーティストはGLAY。

 ーー2023年6月に設置した「人口減少対策本部」についてお聞かせください。

 大泉 「人口減少対策本部」は、地域の活性化を図って、若者をはじめとする多くの人たちに選ばれる、魅力ある都市を目指すために設置しました。そこでは、重点方針として①移住定住の促進②子ども教育への支援③仕事の創出ーーの3つを定め、それぞれ取り組んできました。2024年度の施策としては、1つ目は移住・人口減担当課を設置して、4月からお試し移住事業を行っています。2つ目は第2子以降の保育料無償化、公立はこだて未来大学の授業料などの無償化をしています。これは地元の学生限定です。また、奨学金返還支援事業も行っています。仕事の創出については、企業誘致のさらなる強化のための有識者会議を設置するなどして、取り組んでいます。

 ーー移住サポーターも任命されたと。

 大泉 移住サポーターは、4人にお願いしました。女性2人と男性2人ですが、若い方もいますし、高齢の方もいます。函館に強い思いを持って移住された方たちで、自分自身の移住経験や函館の魅力を伝えていただき、これから移住を希望される方と函館の街との橋渡し役を期待しています。具体的には、当市に移住してきた人たちの定住に関する相談対応や情報発信などをしてもらっています。移住定住に関するイベントは、民間も行っていますが、そうしたイベントへの協力もお願いしており、付随する活動も広く行ってもらえると思っています。

 ーー人口減少は、全国のほとんどの自治体が抱えている課題です。出生率が低下する中、高齢者の比率が多くなって自然減は避けられませんが、社会減の影響も大きい。

 大泉 人口が減少することに、社会がフィットしていかなければならないのですが、人口減少が急激すぎると、社会をフィットさせることが困難になります。函館のように、人口が急激に減少している自治体では、フィットさせるための対応策が追いつかない。よくスマートシュリンクという話がありますが、そういうふうにできないほどの人口減少が進んでいます。それによって起きる社会のひずみや悪影響が、非常に大きくなっていると実感しています。現時点で、危機感を持っていない市民の方もいると思いますが、実際にこのスピードで人口が減少すれば、10年後、20年後、30年後には、とても社会が持たないと思います。

 ーー北海道新幹線の乗り入れについて、具体的にどう進めていくか、お聞かせください。

 大泉 「新幹線等の函館乗り入れに関する調査」は、技術面、運用面で可能なのかどうか、そして整備費や経済波及効果を明らかにするのが大きな狙いでした。それがないと、議論すらできないからです。関係機関との具体的協議はもちろん、当然、市議会の議論も必要です。市民の皆さんと話し合うにしても、土台がありませんでした。
 今年3月に、技術的には整備可能だという調査結果を公表して以降、市議会をはじめ、多くの質問、ご意見をいただいています。こうした議論の足がかりができたのは、調査結果があってこそなので、まずは、このこと自体が大きな1歩だと認識しています。

 函館延伸は、先ほどの人口減少の問題と繋がります。23万人が住んでいる函館は、あまりにも急速な人口減少によって、空き家が爆増し、子どもの貧困が増え、場合によっては、非行や治安の悪化まで想定しなければならない事態になっており、大きな危機に直面しています。函館は、中核市の中でも人口減少は最悪で、特に深刻な状況です。それを止めるためには、よほど大きなインパクトのある変革が必要です。インパクトのある変革が幹となって、そこに枝となる施策を加えていくことで、効果が上がっていきます。幹がないのに、枝の事業だけをしても、とても今の人口減少は止められない。幹になるべきものの一つが、市民理解を既に得ている函館駅への新幹線の乗り入れだと思います。これを軸に、負の連鎖を止めることは可能だと思う。

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