ウマ娘人気の今と馬産地・日高の地域課題

社会・文化

 2024年8月24日に、3・5周年を迎えたCygames(本社・東京都渋谷区)のアプリゲーム『ウマ娘 プリティダービー(以下、ウマ娘)』。競馬、競走馬に興味関心を抱く新たなファンを増やすとともに、馬とゆかりの深い北海道では、ウマ娘にちなんだ観光需要創出の動きが、各地で活発化している。一方で、馬産地、日高管内ではウマ娘ブームの到来とともに、観光客のルール、マナー違反が新たな地域課題に。ウマ娘ファンという新たな観光需要の取り込みと、牧場見学などのルール、マナーの徹底をどう両立させていくのか。地域の関係者らに聞いた。(写真は、柵のすぐ近く草をはむナカヤマフェスタ)

 浦河郡浦河町の観光宿泊施設「うらかわ優駿ビレッジAERU(アエル)」。地元住民もよく利用している「あえるの湯」やスポーツ合宿、屋外イベントに適した広い天然芝グラウンドの「優駿広場」を擁するなど、幅広い客層から支持されている。乗馬体験など、馬たちと身近に触れ合え、重賞レースで優れた成績を収めた、引退功労馬たちを間近で見学できることでも人気。その中には、2023年2月に惜しまれつつ逝去した1993年のダービー馬・ウイニングチケットや、同年9月に仲間入りした2010年宝塚記念優勝馬・ナカヤマフェスタなど、いわゆるウマ娘の実馬も名を連ねる。

(写真は、ウマ娘・ナカヤマフェスタの等身大パネル)
(写真は、ウマ娘・ホッコータルマエのパネル)

 加えて、「ウェルカムセンター」内には、名馬を讃えるホースギャラリーが設けられて、前述のウイニングチケット、ナカヤマフェスタをはじめ、テイエムオペラオー、ホッコータルマエと4人のウマ娘等身大パネルも設置されている。ホッコータルマエは、とまこまい観光大使にもなっているほど苫小牧市と縁の深い名馬だが、「生まれが浦河町ということで、ここに設置しています」と乗馬課の太田篤志マネージャーは、設置理由を話す。宿泊棟には、ウイニングチケットとホッコータルマエのコンセプトルームもある。

 ウマ娘ファンには、お勧めの同施設。アプリゲームの展開から3年余りが経過した現在は、ウマ娘人気はどうなのか。「ピークを越えた実感はなく、閑散期も含め継続的に(お客さまが)来られている印象です」と太田氏。そのうえで、「3年くらい前から見学に来られる客層が、ゲーム世代といいますか、20代~30代の若い方々の比率がとても増えました。3年前から客層が劇的に変わった印象です」と話す。

 同施設は、かねてより往年の競馬ファンや馬好きの人々に支持されていたが、ウマ娘をきっかけに、功労馬見学を目的とした、新たな若い客層が集客を底上げ、その勢いが現在まで続いている。こうした客層は、乗馬など新たなアクティビティにも挑戦している。「乗馬の初心者コースのお客さまがとても増えました。功労馬見学だけではなく乗馬もやってみようと、ウマ娘ファンの方々は乗馬人口の増加にも貢献していると感じています」(太田氏)。

 そうした中で気になるのは、訪れる人のルール、マナー違反の問題。馬産地には守るべき、あるいはやってはいけない幾つもの決まりごとがある。例えば、無断で放牧地に入らない、勝手に草や食べ物を与えない、ペットと一緒に牧場に行かない、馬を驚かせないようフラッシュで馬を撮影しない、傘を広げない、自撮り棒を伸ばさないーー等々。そういった決まりごとの代表的なものは、「競走馬のふるさと案内所」が出している、牧場見学の9箇条だ。

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