札幌証券取引所・石井純二理事長インタビュー「国際金融都市目指す。夢物語で終わらせない」

経済総合

 証券会員制法人札幌証券取引所の理事長に、北洋銀行前会長で、北海道経済同友会代表幹事を務めた石井純二氏(73)が就任して、3ヵ月が経過した。石井新理事長は、GX(グリーントランスフォーメーション)投資のプラットフォームとして期待される札証に、新事業推進部を設けるなど着々と手を打っている。一度は経済界からリタイアを決めた石井氏だが、「育ててもらった北海道に最後のご奉公」と重責のポストを引き受けた。札証とGXをどう結び付けていくのか、インタビューした。〈いしい・じゅんじ〉…1951年5月、芦別市出身。1975年弘前大学人文学部卒、同年北海道拓殖銀行入行。2004年札幌北洋ホールディングス取締役、北洋銀行取締役、2006年北洋銀常務、2010年札幌北洋HD代表取締役副社長、北洋銀副頭取を経て2012年4月から頭取、2018年から会長、2021年3月に退任。頭取在任中は、第2地方銀行協会会長を務めたほか、2018年度から2020年度まで、道経済同友会代表幹事。

 ーー13年ぶりの理事長交代です。抱負を聞かせてください。

 石井 今年3月に北洋銀行顧問を退任しましたが、それを機に公職もすべて退いて、リタイアすることにしていました。その後に、各方面の方々から今回のお話を頂戴しまして、正直かなり逡巡しました。証券取引所という業務について私はよく知りませんし、年齢的にも73歳ですから、本当にお役に立てるのだろうかという気持ちがあったからです。ただ、北海道には、千歳のラピダス進出による半導体産業の集積、それから今回のGXに絡む国家戦略特区指定という大変大きな追い風が吹いています。

 この2つのプロジェクトには、かつて北海道が経験したことのない巨大な資金が投入されるということで、北海道にとって大変大きなチャンスです。その中で、当取引所は、GXに関するプラットフォームとしての役割を担っていかなくてはならない。そういう面で、微力ですが、北海道への最後のご奉公としてお受けした次第です。

 ーー札証の機能、役割を改めて聞かせてください。

 石井 1949年に設立された札証は、間もなく75周年になります。その役割の一つは、上場企業を増やして、市場の活性化に繋げていくという、道内経済のインフラとしての役割があります。もう一つ、札証は、2000年にアンビシャス市場を創設しました。これは近い将来、本則市場へステップアップすることを視野に入れた育成、成長市場です。近年、よく言われるスタートアップ企業を育成していくという、大変大きな役割を担っています。アンビシャス創設からの総上場社数は、20社に及んでいます。

 今後も、北海道で新たなスタートアップ企業が、どんどん出てくる可能性がありますし、その後押し役となるのが、ラピダスをはじめとする半導体関連産業の集積とGX産業だと捉えています。言うまでもなく、北海道はものづくり企業、産業が非常に弱い。第2次産業の中で、製造業のウェイトは、全国平均と比べて10ポイント以上低い。結果として、経済の浮揚力が弱いということになってきます。今回の半導体の集積、あるいはGX産業は、道内のものづくりに関わるスタートアップを勢いづけるでしょう。

 例えば、洋上風力発電施設は、部品の数が非常に多くて、2万点以上というように言われており、自動車と同じように産業の裾野が広い。それに、相手が自然ですから、毎年、定期的にメンテナンスが発生します。それらを、地場企業が担っていくことが絶対的に必要でしょう。2040年までに、洋上風力については、45ギガワットを国内で供給していく方針があって、そのうち15ギガワットは、北海道で賄う構想があります。15ギガワットには、洋上風力がおよそ1000機必要になってきます。

 今は14~15機ですから、構想通りにいけば、北海道の果たす役割、企業の果たす役割は、ものすごく大きくなっていくと思います。そういった企業が、これからアンビシャス市場に上場して、本則市場にステップアップしていくことが期待できます。また、GXに関する北海道の成功事例が、どんどんとアジアに出ていく可能性もありますから、北海道だけで終わらず、次の展開としてのアジアへの進出もあると考えています。

 ーーGXでは水素も有力です。

 石井 水素を制する者が、ゼロカーボンの勝者になると言われています。札幌は、水素自動車を普及させたり、水素ステーションをつくり始めたりしており、新しい会社の設立という動きもありますから、水素の動向についてもしっかり見ていきたい。北海道の企業が、それに絡んでいけると良いと思っています。

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