イオン北海道(本社・札幌市白石区)が、2024年10月1日に西友(同・東京都武蔵野市)の北海道事業を170億円で買収することを決めた。「イトーヨーカドー」、「西友」が北海道から撤退、GMS(大型スーパー)は、「イオン」1強が鮮明になる。(写真は、「西友西町店」)
イオン北海道が、西友の北海道事業(札幌市内9店舗)を買収することを決めたのは、イオン北海道が策定している中期経営計画で、2025年度売上高3800億円達成を実現するため。2023年度の売り上げ予想は約3300億円。西友の北海道売上高約260億円を取り込み、目標達成に弾みをつける。
イオン北海道が、西友北海道事業買収の検討を開始したのは、2023年下期から。検討から早い段階で買収を決めた。西友本州事業の先行きが不透明な中、北海道は先行した形だ。GMSが厳しい環境に置かれていることは、「イトーヨーカドー」の道内撤退を見ても明らかで、「西友」も同様の環境に置かれていることは、間違いない。西友北海道事業の1店舗当たりの売上高は、単純計算で30億円。食品中心のSM(スーパーマーケット)店舗もあるが、GMS売上高がこの金額では、採算ラインに乗っているとは言い難い。
西友は、ウォルマートが手放して以降、目標が全店に浸透しきれない、地に足がつかないGMSの面もある。イオン北海道がそれを取り込み、食品はさておいても、衣料、住居余暇を活性化させ、館全体の利益体質を形づくるには、相当の経営努力が必要になる。道内の食品小売業は「イオン」、「コープさっぽろ」、「アークス」の3強とされ、今回のイオン北海道による西友北海道事業の買収で、「イオン」が一歩先に出るとみるのは早計のようだ。むしろ、厳しい経営のGMSを取り込むことによって、一歩下がったとみる方が正解かもしれない。GMSの衣料、住居余暇の立て直しに力点を置かなければならず、儲け頭の食品集中がそがれかねないからだ。
イオン北海道の前身の1社、マックスバリュ北海道は、かつてジョイやいちまるの事業承継に苦労した。規模の小さなSMでさえ、利益体質構築には血の滲む努力を要した。2015年のダイエー道内9店舗承継時と今では、GMSを取り巻く環境は大きく変化している。規模の大きなGMS承継は、SMの比ではないだろう。道内スーパーの社長は、「食品売り場でベンチマークしているのは、『マックスバリュ』ではなく『イオン』。挑戦的な新しい取り組みは参考になる」と話す。イオン北海道は、食品で客を呼び込み、客を上層階にあげる噴水効果で衣料、住居余暇の利益体質を築き上げてきた。西友北海道事業の買収は、この好循環にどう影響するだろうか。