創業97年、小樽のおふくろの味「北川食品」が後継者難で自主廃業

経済総合

 大正14年(1925年)創業で今年97年目を迎える老舗の佃煮、煮豆、漬物製造・販売、北川食品(本社・小樽市信香町3-21)が自主廃業した。後継者難で、同業者への事業承継も進まず廃業を決めた。債務返済に支障はなく黒字状態で事業を終える。(写真は、小樽市信香町の北川食品本社工場)
(写真は、小樽市銭函の銭函工場)

 北川食品は、「丸一北川食品」の屋号で佃煮、煮豆、漬物の製造・販売を行ってきた。創業は大正14年で、昭和26年(1951年)に法人を設立。戦後、北海道では大根が余っていたため、大根を仕入れて沢庵漬けを製造、会社成長の原動力になった。創業者は、道内に20数社あった沢庵漬けメーカーが製造した沢庵漬けをコンテナにまとめ、全国に出荷するなど、業界のリーダー的役割を果たした。

 その後は、沢庵漬けのほかニシン漬け、煮豆、小女子(こうなご)の佃煮などを手掛けてきたが、近年になって食生活が変化、佃煮や煮豆の需要が減少。スーパーでの販売も減少してきたことに加え、後継者がいないことから、3代目の北川勝三社長は数年前から事業承継先を探してきた。

 しかし、業界全体が縮小傾向のため、承継先が見つからず自主廃棄を決断した。事業停止は、2022年9月1日。事後処理にあたっている坂口唯彦弁護士(札幌弁護士会)は、「これ以上延ばせば、おせち料理の注文などが入ってくるほか、原材料の値上げも深刻になってくるため、9月1日での廃業を決めた」と話す。製造部門のパートを含めて従業員約30人は同日付で解雇した。

 本社と銭函工場(小樽市銭函3丁目508-1)は売却する方向で調整しているが、「同業者の取得意向がないため、倉庫業者などへの売却を想定している」(坂口弁護士)という。現預金と会社資産で債務返済は可能としており、負債は残らないもよう。同社の創業以来のモットーである“おふくろの味を食卓へ”は、100周年を目前に断ち切られることになる。

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