大地みらい信用金庫(本店・根室市)が、根釧地域の経済活性化を目指したネットワーク組織「KONSEN(根釧)魅力創造ネットワーク」を18日付で設立した。まず地域で強みのある「食」に照準を当て消費者目線で付加価値化に努め首都圏や海外に販路を切り開いていく。組織の立ち上げを呼びかけ、代表にも就任した遠藤修一同信金理事長に聞いた。(写真は、遠藤修一理事長)
――設立の経緯は。
遠藤 当金庫主催で年2回、根釧台地金融懇談会を開いている。日銀の支店長を講師に招き景気のレクチャーを受けるのですが、その後の懇談会で参加している企業や地域の自治体首長などからいつも「広域ネットワークで連携できれば良いね」という話が出る。回を重ねるごとに「話だけで終わるのは如何なものか」と言う声が出て、私自身も常にそういう意識を持っていたので背中を押され組織を立ち上げることにした。
――大地みらい信金をはじめ地域の信金は商談会などを積極的に行い地元企業の販路開拓に力を注いているが、今回の組織はどう違うのか。
遠藤 当金庫でも地元企業の商品を百貨店、スーパー、商社などに繋ぐ商談会は過去6年間行ってきたが、それは個社別の支援。一定の成果は生むがそれだけでは地域全体の発展には足りない。それぞれの企業に任せて進化できる部分と解決できない部分がどうしても出てくる。共通の課題をみんなでクリアーすることも含めてネットワーク組織を立ち上げた。
――根室と釧路は行政の区割りもあってなかなか一体的な取り組みができなかった。釧路と根室を営業エリアとする大地みらい信金だからこそ(組織立ち上げが)可能だったのでは。
遠藤 ネーミングひとつとっても難しい面があった。「根釧」はサブにして「KONSEN」をメインにしたのも、釧路、根室の垣根を取り払いたい狙いもある。地域資源を面的に生かしている地域には、十勝やオホーツク、南北海道などがあるが、KONSENは水産や乳製品で一番個性を発揮しやすい地域だと思っており、ネットワーク組織でそうした個性により磨きをかけたい。
――具体的にはどんなに活動をしていきますか。
遠藤 特徴のひとつは事業者をネットワークでつなぐことのほかに各自治体や道経済産業局、釧路公立大地域経済研究センターなどの支援組織が加入していること。客観的目線でエリアの強み弱みを評価し、課題を指摘してアドバイスしてくれる支援機関が一緒に参加しているのは大きい。企業で実際に参加してもらいたいのは若手スタッフ。若手の皆さんが横の連携や様々な機関とのつながりを深めてチャレンジをしていくと人材育成や人材の輪の形成になり、自社製品を光らせることと地域全体のことも考えもらえるようになる。
何が弱くてどこに力つけていかなければいけないのか共通認識が底上げされると将来的な力になっていくのではないか。釧路地域は、産官学組織の「食と観光のブランド化推進協議会」がメンバーになるのでオール根釧が一つになるのは間違いない。現在は、藤井水産やカネマ浜屋商店、べつかい乳業公社など13社と自治体、行政機関など11組織の24機関が集っているが、どんどん加入いただける企業が増えていけば良いと思っている。
――地域のハンディとして距離と時間があります。物流面でのネックは克服できますか。
遠藤 物流のハンディはなくなってきている。釧路空港を夕方5時に出ると翌日の朝7時には香港に食材が届けられるようになっている。これは、東京や関西、北陸から輸出するのとほとんど時間的に変わりがない。実際、当金庫の取引企業の中には、香港のシティスーパーにカニ、ホタテなどをこの空路で運んでいる。時間的、コスト的格差はこの地域でもだんだん解消されてきた。良い産品なら十分競争力があるということだ。
一方、海路でも根室からベトナムにサンマを輸出しているが、コンテナは釜山経由でベトナムに行くのに14日間で済み、輸送価格も㌔当たり15円程度で現地まで届く。むしろ関西など国内よりも安くなるケースもあって距離と時間のハンディを超える物流が可能になってきている。
地域の地力のある企業の良い産品に足りない発信能力をこの魅力創造ネットワークが補完していけば、閉鎖的商圏から広域に展開していけるだろう。それだけの地域資源の潜在能力は十分にあると考えている。