震度7に及んだ北海道胆振東部地震の震源地に近い勇払郡厚真町浜厚真。札幌から車で90分、勇払原野が広がる海岸近くにブラックアウトの原因になった北海道電力苫東厚真火力発電所がある。広大な原野が続くため、遠くからでも高さ70mもある発電所の建物や煙突はくっきりと見える。地震発生から2週間、発電所は再稼働を始めた1号機に続き、2号機、4号機の復旧作業が進められていた。現場の状況をルポする。(写真は、再稼働を始めている苫東厚真火力の1号機)
(写真は、タービン近くから出火した痕跡が残る4号機の外枠)
発電所の建屋内部に入ると、巨大な空間が広がっていた。幾何学模様のように縦横に走る配管類が、そびえ立つように高くまで伸びている。床には緑色に塗装されたカマボコ状の装置が見えた。地震後に停止していた1号機(35万kW)のタービンだ。19日から再稼働を始めたこのタービンは、唸りをあげるように鈍い音を響かせている。金属製のメッシュ状の床下にある蒸気弁からは暖かい空気が足元から漂ってきた。
地震によって1号機は、蒸気になる前の高温高圧の熱水が通る上部ボイラー管に亀裂が入り損傷した。損傷した配管を取り換え、水圧試験やタービンの健全性を確認して19日から再稼働に入っている。現在は毎分3000回転の通常モードで運転しており、ゴォーと響く音は一定のリズムを刻み順調に発電している様子がうかがえた。
その1号機の奥には、休止中の2号機(60万kW)のタービンが見える。地震の被害は1号機よりも多く、下部のボイラー管は10本、上部のボイラー管も左右1本ずつの2本が損傷するなど合計12本の損傷があった。既にすべての管の取り換える作業は終了しており、水圧試験やボイラーの健全性も確認、現在はタービンの健全性を調べているという。
発電所建屋の最も端にあるのが2002年稼働を始めた4号機だ。出力70万kWでタービンの直径は2号機よりひと回り大きく直径4mもある。4号機はタービン近くから出火したが、1、2号機がダメージを受けたボイラー管は損傷しなかった。出火の原因について、北電火力部の菅原岳宏課長は、「タービンの軸受けに注入している潤滑油が地震の影響でずれたパッキンの隙間から漏れて高温部分に接触、そのことによって発煙、発火したとみている」と話す。タービンを覆っている外側の一部には、今でも焦げ付いた跡が2ヵ所確認できた。
(写真は、亀裂が入って損傷した1号機のボイラー管)