福島第一原発事故で原発事業への不信が高まり、再生可能エネルギー発電が注目されているが、道企業局が保有する水力発電施設の売却が俄かに脚光を浴びてきた。道は2年半前に水力発電施設の民間への譲渡を基本方針に定めている。泊原発を抱える北海道電力は、当時取得に後ろ向きだったが、客観状勢は一変。道議の中には「道の行財政改革の一環になる」と売却を後押しする声も出ている。(写真は道企業局の滝下発電所)
道企業局が保有する水力発電施設は道内8ヵ所。深川市の鷹泊や栗山・由仁町に跨る川端のほか、北炭から取得した自家発電用清水沢、上発電所など。
8水力発電所の合計発電量は7万940kWで09年度の総発電量は3億2016万3400kWh。
道は水力発電事業について、06年2月に「新たな行財政改革の取り組み」の一環として民間譲渡を視野に入れた事業のあり方を検討、有識者で構成する道営電気事業のあり方検討会で議論した結果、07年1月には電気事業は民間に譲渡すべきという提言を得ている。これを受けて道は08年11月に譲渡の方針を固めた。
北電の発電能力は10年3月末で741万kW。そのうち原子力が207万kWで火力406万kW、水力123万kWで構成されている。北電の総発電量のうち水力の占める割合は、約1・7%。
北電の水力発電施設は道内に53ヵ所あり、最大の施設は新冠と高見でいずれも20万kWの発電能力がある。
道企業局の施設は、92年に稼動を始めた滝下発電所の1万6600kWが最大。中には25年から運転開始をした滝の上発電所のように2340kWの小型施設もある。
北電がこうした施設を取得するかどうかは未定だが、少なくとも福島原発事故以降、自然エネルギーを見る目は一変した。北電が泊3号機で計画するプルサーマル発電は、原発停止後も再臨界の可能性があり、「当面、危険な原発はひとつひとつ止めていくべき」(舘野淳核・エネルギー問題情報センター常任理事・事務局長)という流れにある中で、効率やコスト面で劣位にある水力発電がどう位置づけられるのか、検証が必要になっていることは確かだ。