オール北海道で、食に関する産業起こし・地域起こしに取り組む「食クラスター協議体」が結成されて半年、この取り組みの先導役のひとつ『サケ節』が来年早々から札幌で味わうことができる。2月のさっぽろ雪まつりでは、ブースを出店してサケ節の試食コーナーも設けて、世界に向けて発信、ブランド化にも取り組む。


 サケ節は、鰹節や鯖節に比べて何倍ものグルタミン酸が含まれており、甘くてまろやかな味がする。
 ラーメンやそば、うどん、スープのだしやつゆ向けに使えるほか、おにぎりの具やお好み焼きの上に振り掛けるなど、そのまま食べることもできる。
 道の研究機関である食品加工研究センターの技術を利用し、既に12月から羅臼漁協購買部が、羅臼の道の駅で小分けしたサケ節のパック販売を始めている。また、羅臼観光協会の協力でサケ節を使用した調理法を開発中で、レシピをガイドブック化して配付する予定。
 サケ節に利用するのは、所謂ほっちゃれと呼ばれるサケで、それ自体はほとんど利用されていなかった漁業資源だった。食加研が、こうしたほっちゃれのサケをサケ節にする効率的な技術を開発、その技術を羅臼漁協が導入したものだ。
 このサケ節を使って、来年1月中旬から万世閣グループや野口観光の運営するホテルでは朝食メニューに取り入れる予定で、ホテルの売店でもサケ節を販売する。また、さっぽろ雪まつりでは、サケ節の試食コーナーを設けてブランド化に向けたトライアルも進めていく。
 食クラスター協議体は、道庁が窓口になっているが5月の発足時には経済団体や行政、農業・漁業団体など100団体でスタートし、現在は加盟団体が803にも及び、発足時から8倍に膨れ上がった。道内179市町村がすべて加入しており関連団体を含めると産官学金のオール北海道体制が出来上がっている。
 この協議体を仕掛けたのは道庁経済部食関連産業振興室長の永田吉則さん。
「食クラスター協議体は、ワンストップサービスを体現した組織。道の予算は2000万円だが、この組織が横の連携などを有機的に取っていけば食産業の高付加価値化、ブランド化を推進していくことができる」と言う。
「大切なことは地道にコツコツとやること。もちろん、スピード感や実際に企業が儲けることが必要だが、ひとつひとつをコツコツ積み上げていくことがそれを可能にする」と地に足をつけた食クラスター展開が基本だと認識している。
 永田さんの考える付加価値とは何か。「安全、安心、美味しいというのは基本。そのうえに『楽しい』、『面白い』、『ためになる』という要素が加わって付加価値は生まれる。消費者が高くてもモノを買う動機は、その3つが備わっているからだと私は考えている」と述べている。
 サケ節は食クラスター展開の先導役を担うもので、永田さんは期待と不安を抱えながら、その舞台づくりに手を尽くしている。


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