イオン北海道星野三郎社長インタビュー【上】

流通

IMG_9186 イオン北海道(本社・札幌市)の新社長に5月に就任した星野三郎氏(59)。消費増税後の不透明な消費環境の下、旧ジャスコ北海道事業部長以来8年半ぶりの北海道で陣頭指揮を執る。GMS(総合スーパー)不振が全国的な傾向の中で、イオン北海道は強い利益体質を構築、GMSを核にしたショッピングセンター(SC)で新機軸を打ち出し消費者を引き付けている。就任5ヵ月の星野社長にイオン北海道の針路を問うた。(2回に分けて掲載します。写真はインタピューに答える星野社長)
 
 
 
 星野氏は大阪府守口市生まれ。就職はオイルショックで厳しかったが、成長する流通業界を選び同年ジャスコ(現イオン)入社。振りだしはジャスコ発祥の四日市店(三重県)。3年で販売課長、36歳で店長。最初の店長は四日市郊外の小諸店。ジャスコは社内教育に熱心で、星野氏も3年目から社内大学(現イオンビジネススクール)に入って学んだという。「入社動機はたいしたことはなかったが、入社後には図書館通いもしてかなり勉強した思い出がある」
 
 ――ジャスコ北海道事業部長以来8年半ぶりの北海道ですが、旧ジャスコ、旧ポスフール時代と比べてイオン北海道はどう変化していますか。
 
 星野 イオンリテールの事業部から独立、旧ポスフールを継承した会社だが、2007年の設立から7年間でかなり北海道に根差してきたと思う。イオンリテール時代にオープンした7店舗も現在では地域に密着した店舗になった。札幌桑園店(札幌市中央区)や札幌平岡店(同市清田区)の周辺はオープン時と街の成熟度が全く違う。周辺の他の商業施設とともに良い街になったと思う。発寒店(同市西区)、苫小牧店(苫小牧市)なども含めて地域のインフラとして機能していることを実感する。
 
 ――社長就任に際し、社員にどんな言葉をかけましたか。
 
 星野 店舗は増えていないが、イオン北海道としての7年間は改革が進んだ。私がジャスコ北海道事業部長だったころにジャスコからの出向者は550人くらいだったが、今はイオンリテールから120人くらい。旧ポスフールを母体に殆ど北海道の人たちで運営している。またこの7年間でかなり利益がでるようになり、GMS(総合スーパー)のフォーマットではトップクラスの利益水準だ。イオンリテール色から脱皮したことは高く評価しているし良く頑張ったと声を掛けた。ただ、ショッピングセンター(SC)のニーズが変わっているので、経営数字を維持しながら、今後6年くらいでほとんどの店を生まれ変わらせることが最大の課題だと話した。
 
 ――旧ポスフールの店舗の多くは開業後30年近く経過していますが、どう活性化しますか。
 
 星野 全31店舗のうちで20店舗は旧ポスフールの店舗で殆どがオープン30年前後。10年以上の店を含めると年数を経た店舗が多いのは確かだ。それらの店もこの7年間で利益体質を構築できたので、それをベースにもっとお客様のニーズにあったSC(ショッピングセンター)に生まれ変わらせていく。
 
 ――具体的なケースを挙げるとすれば…。
 
 星野 お客さまは昼や夜の食事の準備だけを目的に来店しているのではなく、『過ごす』、『時間を楽しむ』など多様な目的から来店している。昨年4月に活性化した札幌桑園店はそうした変化に対応したものでフードコート、レストランと食品フロアが一体となった形にした。1階ゾーンはHBC(ヘルスビューティケア)を除いて全部食関連で占められている。このリニューアルによってお客さまの来店頻度は上がっており、SC全体で客数は前年比20%伸びている。このようなデリカゾーンの強化拡充とフードコート、イートインは今後、各店舗でも欠かせない活性化策になるだろう。
 
 ――食品の構成比率が55%くらいでかなり大きなウエートを占めていますね。食品強化は大きなテーマだと思いますが今後の展開は。
 
 星野 食の中身が変化している。お米は昨対伸び率は90%前後。ただし、北海道米は伸びている。10年前、北海道米を選ぶお客さまは40%くらいだったが、今では95%くらいになった。北海道米は売れているが、コメ全体は10%以上落ちている。また、10㎏のコメは売れなくなり2㎏や最近では1㎏のコメが売れるなど中身が随分変わっている。北海道は高齢化のスピードが速く、夫婦二人で味噌汁にご飯、おかずを揃えて食べる回数は着実に減っているように思う。高齢者の“作らない化”は着実に進んでいるようだ。
 増えているのは、例えば夫婦でウォーキングをして帰宅後にトーストやグラノーラ、ヨーグルトを食べるパターンではないか。パンやグラノーラは昨対で300%の伸びを示しているのを見てもそういう傾向が高まっていると言える。人口が減ってもニーズは多様化しており食品素材そのものとともに食に関わる分野を強化充実していくことが今後の展開のポイントになる。(以下次回に続く)

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