キャリアバンクアカデミー「介護職員研修」、日本人と外国人が共に学ぶ姿が当たり前に

社会・文化

「まず湯温を確かめてから手すりに手を伸ばしてもらい、背中に手を添えて腰をゆっくりと動かしてもらいます」。キャリアバンク(本社・札幌市中央区)アカデミーの介護職員初任者研修では、講師の指導の下、ユニットバスを使い、研修生同士が二人一組になって入浴の実技講習が行われている。研修生はこれまで、日本人ばかりだったが、今年に入ってからは、特定技能を持つ外国人が、日本人と一緒に研修を受ける姿が目立つようになってきた。(写真は、入浴の実技研修)
(写真は、テキストを使った講義)

 介護職員の初任者研修や実務者研修を行っているキャリアバンクアカデミーは、2023年度から、研修をスタートさせた。これまでの約2年間で120人以上が修了している。初任者研修を例にとると、テキストを使った座学と実技を合わせて130時間のカリキュラムが用意されている。そのうちの40時間までは自主学習が認められているため、研修者同士が机を並べるリアル研修は、90時間にも及ぶ。

 日程を見ると、ほぼ1ヵ月間、全日にわたって研修が行われる。科目には〈人権と尊厳を支える介護〉〈老化に伴うこころとからだの変化〉〈死にゆく人に関連したこころとからだの仕組みと終末期介護〉など、介護職員に不可欠な知識や実技が折り込まれている。初任者研修を修了すると、身体介護や訪問介護の全サービスを提供できるため、初任者研修の重要性は増している。

 1ヵ月間の研修に参加するのは、10人から15人。今年になってからは、そのうちの4~5人はミャンマーやインドネシア、ベトナムからの特定技能外国人が占めるようになった。外国人が日本人と一緒に研修を受ける姿が多くなってきたのは、2025年4月から特定技能外国人による訪問介護ができるようになったことが背景にある。「それを受けて、今年から外国人の受講が多くなりました。将来、受講者の半分以上が外国人になる可能性も有り得ると思います」とキャリアバンクヒューマンリソース営業部メディカル事業の大脇尚也係長。

 研修は日本語で行われるが、特定技能外国人はN3レベル以上のため、受講に支障はないそうだ。講師の一人で、グループホーム「虹の家 琴似」の管理者、松田通氏(看護師、介護福祉士)は、「日本人と同じレベルで話しても、外国の方々は十分理解されています。伝え方の壁は特に感じないですね」と話す。

 とはいえ、外国人にとって日本語での日常会話よりも、読み書きの方がハードルは高い。キャリアバンクアカデミーでは、外国人受講者の希望者に対してカリキュラム外の補修授業を実施、講義で理解できなかったところや、テキスト上の重要なポイントの復習などを行っている。理解度の向上のみならず、結果、筆記試験の対策にもなっており、外国人の修了試験合格者は、現時点で100%となっている。

 キャリアバンクアカデミーの特徴は、講師と受講者の距離が近く、教室全体がフレンドリーな雰囲気に溢れていることだという。「研修後のアンケートでは、受講生の90%以上が高評価をしてくれています。1ヵ月間、一緒に学ぶため、外国人を含めた受講生同士が仲良くなって、研修後も同窓会と称して定期的に親交を深めるケースも増えてきました」(大脇係長)。かくいう大脇係長も同窓会に誘われた経験があり、実際に参加してみると、かつての受講生同士が同期のようにお互いの状況を語り合う光景に感銘を受けたそうだ。
 介護現場は慢性的な人手不足で、特定技能外国人の雇用はますます増えていくのが確実な流れになっている。実際に訪問介護などの現場で働く人を送り出す介護職員研修は、日本人と外国人がともに学ぶ姿が今や当たり前になりつつある。

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