(写真は、こけら落としについて説明する納谷真大氏=中央)
芸術監督を務める納谷真大氏(劇団イレブンナイン主宰)は、「北八劇場」の目的と役割、そしてグランドオープン後のスケジュールについて語った。
「私は大学卒業後、作家の倉本聰さんに師事し、富良野塾で20代を過ごし、そのあと、行き当たりばったりで演劇を続けてきました。そんな私が、素晴らしい劇場の芸術監督という重責を仰せつかり、今、行き当たりばったりではいけないと強く思っています。キチンと計画を立て、劇場を育てていくため、たくさんのメンバーと力を合わせて新しい劇場を生み出す計画を立てています」
「劇場運営の5ヵ年計画を立てています。5年というスパンで劇場を育て、作品を育て、人を育てる形になれば良いと願っています。6年目には、ロングラン公演をたくさん打っていけることを目標とし、それを果たすための第1歩としての1年目を考えています」
「劇場で作品を生み出すだけではなく、大切な才能が札幌にとどまれるように、5年間をかけて札幌に舞台俳優という職業を定着させたい。舞台製作などスタッフの方々も、舞台活動をしながら暮らしていけることを目標に、そうした環境を生み出していこうと思っています。もちろんそのためには、観に来ていただける観客の方々が必要になってくるわけですから、面白い作品を生み出すことにかかっています。その責任を担いながら、真摯に創作に向かっていきたい」
「5月11日にこけら落としとして、『あっちこっち佐藤さん』を公演します。さまざまな方から、新しい劇場のこけら落としには、クラシカルなもの、人間ドラマなどを提案されましたが、伊藤支配人から、『納谷さん、あなたが一番面白いと思うものをやるべきだ』とアドバイスをいただきました。芸術監督を任せられたこともあり、迷いもありましたが、『あっちこっち佐藤さん』というコメディーを選びました。札幌の小劇場では、珍しいこけら落としで、しかもロングラン公演を目指しています。これによって劇場のカラーが大きく決まっていくと思います」
「『あっちこっち佐藤さん』では、オフィスキューの藤尾仁志さん(オクラホマ)の力を借ります。この作品は、2017年に札幌で上演して4000人を動員しました。再演ではなく、新しい作品をつくる形で藤尾さんに尽力いただき、札幌の実力のある俳優たちや富良野からも俳優を呼んで、ダブルキャスト、トリプルキャストで30ステージを耐えられる作品を生み出し、札幌の街を笑いで巻き込みたい。5月11日から6月9日まで、5000人の動員を目指しています」
「若い力を育てることが一つの目的ですから、こけら落しの後は、札幌で活躍している30代の演劇人を中心に、『Sapporo theater jam』という企画を立ち上げます。この企画は、札幌市内、道内で活発に演劇活動をしている30代前後の個人を中心とした企画です。団体や置かれている環境、立場に捉われず、ともに優れた作品をつくることで、若手演劇人が成長する場となることを目指します」
「7月からは、『札幌演劇シーズン2024』に参加します。劇場が生まれるまでに、多大な尽力をいただいた札幌座の斎藤歩さんの作・演出、『西線11条のアリア』を7月20日から27日まで上演します。8月には、東京で活躍している劇団ハイバイ代表の岩井秀人さんを招き、札幌の俳優たちやワークショップで選ばれた方々と、『ハイバイ ワレワレのモロモロ 札幌版』という作品をつくります。札幌で公演した後、東京公演も予定しています」
「このあたりまでは、オープニング期間になっていて、この先から劇場の一般貸し出しが始まります。12月には、私が富良野のメンバーとつくった作品『エンギデモナイ』を公演します。年明けの1月、2月には、中学生、高校生の才能を伸ばし、札幌で演劇を続けていける環境を整えるため、劇団introのイトウワカナさんを招き、中高生たちで創作を行うプロジェクトも考えています」
「1年目のプロジェクトの締めくくりとして、2025年4月に、かつて私の劇団で行った作品で、札幌の有力な俳優たちの力を借りたアガサ・クリスティ原作の『そして誰もいなくなった』を、新たに北八劇場の作品として上演します」
「2024年1月から3月にかけては、10代から50代を対象に、演劇人を育てるトレーニングワークショップを開催する予定です。俳優だけではなくて、スタッフ、プロデューサーを対象にしています。演劇製作者が札幌にはなかなか育っていないという現状を踏まえ、そういう方面の育成もやりたい。まず、手始めに俳優のトレーニングとして振付家のきたまりさんに来てもらい、身体表現を伝えてもらいます。北海道演劇財団の芸術監督、清水友陽さんと連携するなど、講師陣も多彩な人材を揃えて、毎年定期的に開催する予定です」