「ミクニ・サッポロ」や「レストランモリエール」など人気フランス料理店でも使われてきた「焼尻ブランド」の羊ラム肉が、今年8月末で出荷停止になる。供給もとである、苫前郡羽幌町の焼尻島にある町営の焼尻めん羊牧場が、閉鎖されるため。北海道洞爺湖サミットでも提供された「焼尻ブランド」が消滅する。(写真は、焼尻めん羊牧場の羊たち=羽幌町観光協会提供)

 焼尻めん羊牧場は、1962年に焼尻島の漁業者の不漁対策として、町有のめん羊12頭を漁業者に貸与したことが始まり。1966年に町営焼尻めん羊牧場としてスタートした。1969年には外国産肉用「サフォーク種」100頭をオーストラリアから導入し、1986年にサフォーク種純潔生産基地北海道第1号の指定を受けるなど、羊の種畜生産基地として重要な役割を担うとともに、島の観光資源にもなっていた。

 2008年からは指定管理者制度を導入、民間事業者が管理運営することになったが、2019年に新たな指定管理の応募がなく、再び町営に切り替わった。指定管理者の応募がなかったのは、人材不足で働き手が確保できなかったため。町の直営化後も人手不足は深刻で、町は酪農学園大学との連携などによって最低3人の飼育員確保に努め、運営を続けてきた。しかし、昨年9月に2人体制になったことから、町は島民のサポートを受けたり、役場職員が4~5日、島に出張したりして対応するなど、勤務シフトをやりくりしてきた。

 そうした中で、今年3月末に飼育員1人が退職、さらに8月末にはもう1人も退職することになったため、9月以降は飼育員が不在となり、運営継続は不可能として閉鎖を決めた。牧場運営は、個体販売があるものの、慢性的な赤字で、2019年の直営化以降も町は毎年2000万円程度の赤字補填を行ってきた。現在の飼養棟数は344頭で、今年度の販売は170頭が予定されている。残りの羊については、引き続き売却先や譲渡先を探すという。

 副産品の羊毛は、町内の綿羊工房で手編みマフラー、帽子などの材料として利用され、ふるさと納税返礼品としても活用されている。焼尻めん羊牧場の運営は、町の直営化以降も持続可能性がないとして閉鎖の方向で進んでいたが、町は明確な方針を示してこなかった。前町長の死去に伴い、今年5月に行われた町長選で無投票当選した森淳氏(町議8期、議長経験者)は、新町長として6月6日の総務産業常任委員会に出席、廃止方針を説明した。町は、めん羊牧場に代わる新たな地域振興策を探る。


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