旭川の買物公園と聞いてそのリアリティをイメージできる人は、どれだけいるだろう。JR旭川駅から8条通まで1㎞続く幅20mの歩行者専用道路。両側には食・物販の店舗が連なる。中心街の贅沢な空間は、旭川にとって旭山動物園に並ぶマチの財産。しかし、商業施設が郊外に進出、買物公園の賑わいは、昔日の遠景になってしまった。そんな買物公園の再生に向け、タレントで旭川出身の杉村太蔵氏が動くことになった。「買物公園を『きた北海道』(旭川及び旭川以北のエリア)の食と文化の発信拠点にしたい」と杉村氏は意気込む。(写真は、6月25日に旭川信用金庫で行われた記者会見。左から旭川家具工業協同組合・藤田哲也理事長、オーシャン・井上雅之代表取締役、ここはれて・杉村太蔵社長、街制作室・國分裕正社長、旭川信金・原田直彦理事長)
杉村氏は、現在、買物公園の「フードテラス」(5条通7丁目)の一部エリアや人口約690人の日本一小さい村、中川郡音威子府村などで、食や物販に関わる起業家を育成する事業に取り組んでいる。地方創生と起業家支援を結び付けて取り組んできた杉村氏の問題意識は、かつて子どもの頃に親に連れて行ってもらった買物公園の賑わい再生に向かった。昨年4月から旭川信用金庫の原田直彦理事長や旭川ラーメン「梅光軒」を展開するオーシャンの井上雅之代表取締役、デザイン会社の街制作室(札幌市中央区)國分裕正社長らと接触、構想を具体化していった。
杉村氏は個人事務所を「CocoHarete(ここはれて)」(旭川本社・旭川市、東京事務所・東京都港区)に社名変更、このほど「フードテラス」の向かい側に当たる買物公園沿いの5条通8丁目に約450坪の敷地を取得。ここに「旭川ここはれて」と名付けた拠点を整備することにした。現在は時間貸しのタイムズ駐車場として利用されている敷地に約150坪の小さな森「日なたスクエア」(仮称)を作り、周りを取り囲むように一部2階建ての木造建物を配置。小路も設けて路地の魅力も演出する。
建物に入る店舗の広さは約8坪で23店舗を予定、「きた北海道」の農畜水産物を使った料理を提供する飲食店舗やクラフト作家、家具雑貨の物販店などをリーシングする。初期投資が少なく出店しやすい環境を整えるため、テーブルや椅子、什器等は「ここはれて」が用意する。また、キャッシュレス決済のみとして、売り上げの20%(カード手数料含む)が会社に、80%が出店者に入る仕組みとする。キャッシュレス化で会社側に売り上げが入るようにして各店舗の経営を透明化、売れるモノづくりのアドバイスなど経営支援も行う。昼と夜で店舗運営者が変わる「二毛作運営」も一部店舗で可能になるようにする。
杉村氏は、「出店のハードルを下げて、誰でもチャレンジできる場にしたい。ここでの起業がうまくいけば市内の空き店舗を紹介して、さらなる地域活性化に貢献してもらいたい。また、店舗の椅子やテーブルなどには旭川家具を使用、気に入った家具がその場で買えるようにして店舗が旭川家具のショールームになるようにしたい」と話す。
8月6日(金)、7日(土)に旭川市民文化会館大ホールで出店募集説明会を行い、オーシャンの井上氏が委員長に就く選考委員会が出店の可否を決める。杉村氏は選考には関わらない。建物は秋に着工、開業は2022年夏を予定している。22年は買物公園の設置から50年になるため共同イベントも模索する。建物の設計は、街制作室、施工は未定。
杉村氏はこう結んだ。「買物公園の周りにはマンションや戸建てが多い。近隣に住む人たちが気軽に過ごせる場所にしたい。私が生きている間はこの事業を続ける」
(写真は、「ここはれて」のコンセプトを発表する杉村氏)
(写真は、きた北海道エリアの食文化、匠文化の発信拠点「ここはれて」の建設予定地)