一般社団法人札幌青年会議所(札幌JC)は2023年8月21日、札幌市中央区の共済ホールで「北海道・札幌2030冬季オリンピック・パラリンピック公開討論会~あなたは賛成?反対?~」を開催、約400人が白熱した議論に聞き入った。主催者の札幌JC井口優理事長は、「この討論会を通じて、より一層冬季オリパラ招致への理解を深めていただき、賛成、反対の判断に繋げてもらいたい」と挨拶した。(写真は、パネリスト6人が参加した公開討論会)

 パネリストとして参加したのは、札幌市長の秋元克広氏、長野オリンピック金メダリストの船木和喜氏、元衆議でタレントの杉村太蔵氏、弁護士で市の五輪汚職再発防止検討委員会の委員を務める大川哲也氏、キャスターの佐藤のりゆき氏のほか、ジャーナリストの田原総一朗氏がオンライン参加した。ファシリテーターは、フリーアナウンサーの佐藤麻美氏が務めた。

 秋元氏は、「大会経費は施設整備費と運営費からなるが、新たな施設は造らず、オリンピックがあってもなくても、更新していくのに必要なお金として施設整備費を計上している。運営費については、税金を投入しない計画。IOC放送権料の分配金や国内のスポンサー収入、チケット収入で賄いたい。仮に集まらなかったら、それに見合った大会にする」と税金投入をしないことを強調した。

 船木氏は自身が長野大会で金メダルを獲得したことに触れ、「歓迎された中で競技ができたことはとても良かった。開催地で歓迎してくれることが選手たちの最高の表現に繋がると思うので、賛成が増えることを願ってる」と話した。杉村氏は、「税金を使わずにスポンサー資金だけで大会をやれるようにしてほしい。東京大会でもそうだったが、オリパラに政治家が前面に出過ぎている。JOCが先頭に立って誘致を推進して、それが決まってから政治家に後方支援してもらうのが良いのでは」と述べた。

 大川氏は、「東京大会では、建物を建てたり、道路を新しくしたりといった関接的な経費がものすごくかかったと言われている。札幌大会では、間接経費の無駄はないのかをチェックすることが必要。また、IOCが求める施設を、開催地が準備しなければならない条項があるが、その条項を回避できるのか」と課題を提起した。

 佐藤氏は、「過去にオリパラを開催した都市の大会経費は、予算のほぼ3倍かかっている。予定通りに収まった都市はない」と税金投入がないことへの疑問を呈した。田原氏は「世界中から有名な選手が集まって、本気の真剣勝負をすれば、それを見た人は感動する。東京大会は最初7割が反対だったが、開催しているうちにそうした声は聞こえなくなった。東京大会では、なぜあんなスキャンダルが起きたのか。最初からスキャンダルがあったわけではない。なぜ、ああいうことになったのか、検証をして札幌大会に生かすべきだ」と話した。

 これに関して、大川氏は「東京大会は大手広告代理店1社に専任で委ねたことが不正の温床だと言われている。札幌市も代理店への過度な依存の防止ということを打ち立てているが、それは正解だと思う。問題は、それが可能なのかということ」と語った。秋元氏は、「専任契約をすれば最低保証(収入などが不足した場合に不足金額を専任契約者が支払うこと)があるので、組織委員会としては有利になる。一方で、1社独占のため、東京大会ではさまざまな問題が出た。札幌大会では、複数社でジョイントすることも含めて、どういう方向で行くのが良いのかを検討している」と述べた。

 佐藤氏は「誘致をするかどうかを決めるのは市民。市民は賛成と反対が割れている。秋元市長はなぜ住民投票をしないのか。住民投票をして賛成が多かったら、堂々と誘致に向けて動けば良い。反対が多かったら税金を使うのをやめよう」と、住民投票が開催地のスタンダードになっていることを示した。

 住民投票について、大川は「住民投票条例には常設型と非常設型があって、札幌市は非常設型。このため、オリパラに賛成か反対か投票する条例をつくらないといけない。昨年6月にその条例制定の議員提案がなされたが、否決された経緯がある。私は住民投票は実施すべきだと考えているが、実現するのは容易ではない」とした。
 秋元氏は、「札幌市は、常設型の住民投票条例を持つべきだと思うが、オリパラ開催の是非の判断と、それをどう決めるかの手法は別に考えないといけない。反対だから住民投票ではなくて、賛成の人も自分の意思を表明できる道具立ては必要。いずれにしても、大会の運営経費は、税金を投入しない仕組みでやっていかないと、住民の理解は得られない。2000億円を超える大会運営費が税金だと思われている方がほとんどなので、そうではないことを含めて、住民が判断できる材料をきちっと伝えていきたい」と述べた。そのうえで、秋元氏は「市民の意向確認はやらなければいけない」と明言した。



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