北海道ニセコの高校卒業生たちに日本食フルコース無償提供、観光客激減の地元オーナーシェフが逆転発想

社会・文化

 新型コロナウイルスの感染拡大で観光客が激減しているニセコで、クラウドファンディング(CF)で集めた資金を元に地元の高校卒業生たちに日本食フルコースを無償で食べてもらう取り組み「ニセコの卒業生への贈り物」が、16日から始まった。例年のような卒業式を体験できなかった生徒たちに「大人の時間」を体験してもらい、一生に残る思い出を贈るのが目的。31日までの2週間、ニセコ周辺の7高校の卒業生約400人が対象。

(写真は、16日から始まった「ニセコの卒業生への贈り物」に参加した卒業生たち=杏ダイニンク提供)

 この取り組みを始めたのは、倶知安町字山田の「ホテル木ニセコ」1階で「杏ダイニング」を経営しているデリシャスフロム北海道のオーナーシェフ、前田伸一さん(41)。前田さんは、経営していたオーストラリアの日本食レストランを閉め、2014年12月からこのホテルのオープンと同時に杏ダイニングをスタートさせた。
 当初はオーストラリア人のスキー客がお得意さまだったが年々オーストラリアからのスキー客は減少。代わって中国や香港、台湾などからのスキー客や観光客が増え、最近では来店客の9割がアジアからのお客だった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による道の緊急事態宣言と外出自粛要請で、2月25日から予約はほぼすべてキャンセルになった。

 前田さんは道内の農家などから食材を定期的に購入しているほか店舗従業員40人を雇用しており、予約キャンセルのために食材購入を中止したり、従業員を解雇したりすることは負の連鎖に繋がると懸念。そんな中、以前から食育授業で繋がりのあった倶知安農業高の卒業生数人が杏ダイニングを訪問。コーヒーを飲みながら例年と違う寂しい卒業式だったという話を聞いた前田さんは「彼らに何かできないか」と思案。

 そうして浮かんだのがCFによって資金を集め、卒業生たちに日本食フルコースを食べてもらい思い出を贈ることだった。そうすることで食材購入や従業員の雇用を一定程度は続けられるという考えもあった。CFで集めた資金だけでは足りず残りは前田さんの持ち出しとなるが、「何もしないで損を出すよりも高校生たちに楽しんでもらい、多少でも食材購入や雇用の継続に繋がる方が良いと判断しました」と言う。

 3月初旬からアクトナウ(札幌市中央区)のCFで350万円を目標に募集を開始。募集単位は3000円、5000円、1万円、5万円でリターンは4月1日から利用できる杏ダイニングでの食事券など。直近で約130人から約250万円が集まっている。


(写真は、日本食フルコースで出された料理=杏ダイニンク提供)

 卒業生へのフルコース提供が始まったのは16日から。この日は士別産のサフォーク、函館で水揚げされたサワラやサクラマス、知床のエゾシカ肉などを使ったフルコース(1万円相当)が提供された。ノンアルコールのお茶や甘酒などとペアリングも楽しめる。対象は倶知安高、倶知安農業高のほかニセコ高、岩内高、蘭越高、寿都高、真狩高の7高校の卒業生。コロナ感染を防ぐために1組6人までとして1日3~4組に限定している。ディナーの時には写真を撮影、「NISEKO卒業アルバム」として贈呈することも行っている。

 前田さんは、「卒業式で寂しい思いをした彼らにゆっくりと仲間同士で時間を楽しむ大人の体験を味わってもらいたい」と話している。CFでの募集は31日まで継続している。

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