北海道胆振東部地震では札幌市内でも家屋被害が出ているが、この地震によって違法建築が明らかになったケースがある。(写真は、違法建築の店舗兼民家の2階屋根の角部分がビルに突き刺さった箇所)
(違法建築の店舗兼民家がビルに寄りかかって止まっている状態がわかる=写真)
札幌市北区麻生の五叉路の一角。1960年ころに建築された店舗兼民家の2階建て建物が数十年にわたって違法に増築を重ね、隣地に大幅越境。今回の地震によってこの民家の屋根の角部分が隣の3階建てビルに突き刺さった。冬を迎えて降雪が進めば、突き刺さった部分の浸食が進み、被害はさらに拡大する。ビル所有者は、店舗兼民家の所有者に早期の改善を求めている。
違法建築を重ねた店舗兼民家の所有者は、H氏(82)。H氏は60年に2階建て延べ床面積約16坪の建物を建築した。H氏は、その後95年ころから隣地に1m以上越境して隣地に建つキタコー(本社・札幌市中央区)所有の2階建て「北日本麻生ビル」に密着するように違法増築。違法に増築した部分が見えないようにシャッターを取り付けるほど悪質。長年の違法増築によって、当初の36坪の広さは3倍に達するほどになっている。
この違法建築の実態が、今回の地震で明るみになった。というのも、キタコーが所有するもう一つの隣接ビル「キタコー麻生ビル」の2階壁面に、地震の揺れによって店舗兼民家の増築されたトタン屋根の角部分が突き刺さったからだ。写真のように角が食い込んだ状態で止まっている。キタコー担当者によると「隣の家屋は8㎝ずれてキタコー麻生ビルに食い込んで止まった」としている。増築部分の大幅な隣地への越境で建てられたものでもちろん登記もされていない。建築基準法に違反しているのは一目瞭然という。
地震の翌日、この状況を把握したキタコーは、H氏に損傷を受けたビルの早期復旧と越境部分の原状復帰を求めた。しかし、1ヵ月以上経過して、代理人を通して返ってきたのは「補修費を払う」というものだけ。違法建築の解消についてはひと言もふれていなかったという。
キタコーが調査したところ、ビルに突き刺さった部分から雨が染み込み、ビルの損傷を広げていることがわかった。さら冬期になれば雪が凍結と融解を繰り返すことで損傷はより拡大する可能性がある。違法増築された店舗兼民家は、突き刺さった状態でかろうじて倒壊を免れているという。2次災害を引き起こしかねない中、まもなく厳寒期を迎えようとしている。
※2018年11月1日記事訂正しました。32坪を16坪に。